◆リーダーとは
みなさんはプロジェクトリーダーというとどのような立場の人をイメージしますか?
改めて説明するまでもないと思いますが、リーダーという言葉はある集団においてその集団を引っ張っていく立場の人です。集団は企業かもしれませんし、事業部かもしれません。あるいはプロジェクトかもしれませんし、2~3名のチームかもしれません。つまり、ひとが2人集まれば、リーダーが生まれるわけです。
リーダーが生まれると書いたのは、リーダーは誰かに指名されるものでもないですし、本人がやるといえばなれるものでもありません。リーダーになる方法はただ、一つ、メンバーからリーダーとして認められることです。
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◆前提条件と制約条件
プロジェクト憲章でプロジェクトに伝えるものの一つにプロジェクトの実施条件があります。実施条件には、前提条件と制約条件があります。
プロジェクト憲章を上位組織(プロジェクトスポンサー)がプロジェクトを定義し、プロジェクトマネジャーを任命するドキュメントだと考えると、前提条件というのは組織としてプロジェクトに約束することになります。委譲する権限、マネジメントサポートなどが主な内容になります。
では、制約条件とはなんでしょうか?額面通りに解釈すれば、プロジェクトを行うにあたって、プロジェクトを制約したいことです。予算、納期、リソースに関する制限などが制約条件として与えられます。そして、プロジェクトは制約条件を満たしながら組織との間で合意した成果物(プロダクトスコープ)を実現していきます。
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◆スター主義経営
スター主義経営という言葉があります。おそらく、造語だと思いますが、ハーバードビジネススクールのジェイ・ロッシュ教授と、ベイン・アンド・カンパニーのコンサルタント トーマス・ティアニー氏がプロフェッショナルファームの経営形態として使った言葉です。もともとも英語は、「Aligning the star」ですので、スターを並べて、事業を行うといったイメージです。
ジェイ・ロッシュ、トーマス・ティアニー(山本 真司 , 大原 聡訳)「スター主義経営―プロフェッショナルサービス・ファームの戦略・組織・文化」、東洋経済新報社 (2007)
スターという言葉は死語化しているように思いますが、ジェイ・ロッシュ教授たちのいうスターとは、
「優秀かつ長期的に組織に価値をもたらす従業員」であり、「卓越した個人の能力を持ちながら、チームワークを重視し、企業の利益を最優先で考えるという行動特性を持つ存在」
のことです。まさにビジネスの世界できらめく人材で、「ビジネススター」とでもいうような人です。
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◆コンセプチュアルワークは洞察で行き詰る
「洞察」という概念があります。辞書では
物事を観察して、その本質や、奥底にあるものを見抜くこと。見通すこと。
と説明されています。この説明からも分かるようにやっかいな概念です。戦略策定、
シナリオ作成、プロジェクトの目的を考えるなど、洞察の必要なコンセプチュアルワ
ークが行き詰るときは、大抵、洞察で行き詰ります。
洞察できないと起こる状況は割とはっきりしています。「浅い」ということです。
商品開発やプロジェクト、新規事業などの企画プレゼンを聞いていると、筋は通って
いるのだが、浅いと感じることがよくあります。そんな企画は、たいてい失敗します。
逆に、仕組みを作る立場になりますと、「ここは洞察で」としか、説明のしようがな
いことがよくあります。
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◆完璧主義と最善主義
昨年、ハーバード大学で至上最大の受講者があったというタル・ベン・シャハー教授のポジティブ心理学の講義を書籍化した本が出ました。その中に、「完璧主義」を手放すというセッションがあります。
タル・ベン・シャハー(成瀬 まゆみ訳)「ハーバードの人生を変える授業」、大和書房(2010)
興味深い指摘なので、少し詳しく紹介したいと思います。
完璧主義というのはよく使われる言葉なのでご存じだと思いますが、「最善主義」というのは「現実の制約の中で最善を尽くそうという考え方」のことです。通信の用語で、ベストエフォートという言葉がありますが、あれですね。
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◆エグゼクティブ問題
ドラッカースタイルは前回で終わろうと思っていたが、整理していて、もう少し訴えたいことがあったので、今回は番外編とした。
前回まで、ドラッカーの思考を
1.成果を上げる(成果を大きくするドラッカー思考)
2.価値をもたらす計画をたてる(戦略と計画に関するドラッカー思考)
3.顧客を中心に考える(顧客に関するドラッカー思考)
4.チームを動かす(チームのパフォーマンスを高めるドラッカー思考)
5.マネジメントを極める(プロジェクト品質を向上させるドラッカー思考)
6.イノベーションを実現する(技術を有効に活用するためのドラッカー思考)
7.プロフェッショナルになる(自己成長のためのドラッカー思考)
の7つの視点から紹介してきた。今回は番外編として、「エグゼクティブ」問題を取り上げてみたい。カタカナ英語でエグゼクティブという言葉は、役員を指して使われることが多いが、辞書的(定義的)な意味は、管理職員、重役、役員などを指す言葉である。
少し、脱線するが、「executive」の語源は「execute」であり、「死刑を執行する」という意味がある。今年は、裁判員制度で初の死刑判決が下されたが、人が人の生を合法的に奪う死刑ほど思い決断はない。ここから転じて、エグゼクティブは
「最後の決断・決定が出来る人」
という意味で用いられ、上記のような意味で使われるようになった。
さて、ドラッカーのエグゼクティブという言葉の定義は少し異なる。というか、「最後の決断・決定が出来る人」に近い。ドラッカーは経営者の条件の中で
今日の組織では、自らの知識や地位のゆえに組織の活動と業績に実質的な貢献を果たす知識労働者は、すべてエグゼクティブである(経営者の条件)
と指摘している。ドラッカーの考えでいえば、自分自身で地位だけではなく、専門性に基づいて意志決定し、業務を行うものはエグゼクティブだということになる。
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◆はじめに
これまで、
1.成果を上げる(成果を大きくするドラッカー思考)
2.価値をもたらす計画をたてる(戦略と計画に関するドラッカー思考)
3.顧客を中心に考える(顧客に関するドラッカー思考)
4.チームを動かす(チームのパフォーマンスを高めるドラッカー思考)
5.マネジメントを極める(プロジェクト品質を向上させるドラッカー思考)
6.イノベーションを実現する(技術を有効に活用するためのドラッカー思考)
と進んできたドラッカースタイルもいよいよ、最終回だ。最後は、プロジェクトマネジャー自身の問題に言及したい。テーマは
7.プロフェッショナルになる(自己成長のためのドラッカー思考)
である。実はドラッカー思考を一つに伝えると、極端な違和感を持つ人が少なからず存在する。特に、顧客中心やイノベーションなどでは目立つ。そのような人と話してみると感じるのがプロフェッショナル観の違いだ。彼らにしても何らかの意味でプロフェッショナルである。プロフェッショナルの定義は難しいが、少なくとも、「自分で稼ぐことができればそれでプロフェッショナルだ」という感覚を持つ人にはドラッカー思考は違和感が出てくるのではないかと思う。
◆ドラッカーのプロフェッショナル論の原点
そのような人も含めて、最後にドラッカーのプロフェッショナル論をお伝えしたい。
ドラッカーのプロフェッショナル論の原点は
一つは、人は、何によって人に知られたいかを自問しなければならないということである。二つ目は、その問いに対する答えは歳をとるにつれて変わっていかなければならないということである。成長に伴ってかわっていかなければならないのである。三つ目は、本当に知られるに値することは、人をすばらしい人に変えることであるということである(プロフェッショナルの条件)
というところにある。価値と成長、そして影響力である。プロフェッショナルになるには、この3つの要素を備える必要がある。一つ目の自分は何によって人に知られたいかというのは大抵の人は考えることである。日本的にいえば、何で食って行きたいかである。
プロジェクトマネジメントを一生懸命やっているIT業界や製造業では、プロフェッショナルを意識しはじめる時期は業務担当者としての時期であり、当然、そのときに担当している業務でプロフェッショナルになりたいと考える。例えば、システム設計であったり、営業であったり、マーケティングであったり、品質管理であったり、生産管理であったりする。ここは比較的、スムーズにいく。
問題は二番目である。何によって知られたいかは歳を取るにつれて変わっていくことだ。たとえば、あなたは「技術力」によって知られたいと考えているとしよう。あなたの技術力は経験とともに成長していく。このときに、いつまでも「技術力」で知られたいと思っていてよいのかという問題である。
この問題は二つの側面がある。一つはあなた自身の問題としてどうかという問題だ。これは主観的な問題であり、そう思うならそれで構わない。ただし、「知られたい人」からみた場合には、「成長していないように見える」ということを認識した上でそのような考えを持つ必要がある。知られる技術が高度化しても、技術は技術であり、ビジネスにおいてそれ自体が価値であることは珍しい。価値をもたらす手段に過ぎないということだ。
もっと現実的な問題は、組織にとっての問題である。あなたが技術に拘り続ける限り、後進の妨げになることがある。よく先輩の技術者が後輩の技術者に「技術的指導」と称して自分の考えを押しつけている光景をよく見かける。押しつけているかどうかをチェックしたければ、後輩が彼自身のやり方で成功したときに素直に喜べるかどうかを想像してみればよい。
この話は三つ目の指摘と関わってくる。自分と同じ技術を後輩に身につけさせることが、後輩を「すばらしい人」に変えることになるという問題だ。一昔前の技術進歩が比較的ゆっくりしていた時代ならそういう一面もあっただろう。しかし、今はそうではない。技術を伝えることによって仕事はスムーズにいくかもしれないが、人は育たないし、事業も育たない。
続きを読む "【PMスタイル考】第29話:ドラッカースタイル~プロフェッショナル編" »
◆ドラッカーの思考体系
今回は、ドラッカー思考の体系をプロジェクトマネジメントに適用する際の7つの視点
1.成果を上げる(成果を大きくするドラッカー思考)
2.価値をもたらす計画をたてる(戦略と計画に関するドラッカー思考)
3.顧客を中心に考える(顧客に関するドラッカー思考)
4.チームを動かす(チームのパフォーマンスを高めるドラッカー思考)
5.マネジメントを極める(プロジェクト品質を向上させるドラッカー思考)
6.イノベーションを実現する(技術を有効に活用するためのドラッカー思考)
7.プロフェッショナルになる(自己成長のためのドラッカー思考)
のうち、これまで1番目から5番目について説明してきた。今回6番目のイノベーションについてである。
◆イノベーションはあらゆる局面で行われる
長い間、日本企業はイノベーションに対して崇高なイメージを持っていたが、この2~3年、急速に認識が変わってきた。そのきっかけになったのがドラッカーの「現代の経営」にある
イノベーションは事業のあらゆる局面で行われる。設計、製品、マーケティングのイノベーションがある。価格や顧客サービスのイノベーションがある。マネジメントの組織や手法のイノベーションがある(現代の経営)
という指摘である。
日本人がイノベーションという言葉に対して特別なイメージを持っていたのは、おそらく改善との対比である。多くの人がイノベーションと改善は違うと主張してきた。日本語でいえば、イノベーションは「革新」、つまり、新しくすることであり、改善は善くすることである。
この背景にあるのが、連続性である。イノベーションとは不連続な変化であり、改善は連続な変化であるという思い込みがあった。
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◆ドラッカーの思考体系
今回は、ドラッカー思考の体系をプロジェクトマネジメントに適用する際の7つの視点
1.成果を上げる(成果を大きくするドラッカー思考)
2.価値をもたらす計画をたてる(戦略と計画に関するドラッカー思考)
3.顧客を中心に考える(顧客に関するドラッカー思考)
4.チームを動かす(チームのパフォーマンスを高めるドラッカー思考)
5.マネジメントを極める(プロジェクト品質を向上させるドラッカー思考)
6.イノベーションを実現する(技術を有効に活用するためのドラッカー思考)
7.プロフェッショナルになる(自己成長のためのドラッカー思考)
のうち、これまで1番目から4番目について説明してきた。今回5番目のプロジェクト品質についてである。
◆ドラッカーのマネジメント思考
品質管理も難しいが、プロジェクト品質を実現するのはもっと難しい。マネジメントの結果がプロジェクト品質だからだ。
ドラッカーの思考は、すべてマネジメントに通じるものである。その意味で、マネジメントについて何を中心に考えていくかは難しく、実際にドラッカーの信奉者においても意見の分かれるところだと思う。よく知られている思考だけをピックアップしてみても、
・強みを発揮させ、弱みを無意味にする
・目的を問うことが生産性を高める
・考える組織を作る
・成果に焦点を合わせる
・・・
といった考え方が並ぶ。まさに、「マネジメントに正解はない」というのを実感されるだけ、いろいろな切り口があることが分かる。
続きを読む "【PMスタイル考】第27話:ドラッカースタイル~プロジェクト品質編" »
◆ドラッカーの思考体系
今回は、ドラッカー思考の体系をプロジェクトマネジメントに適用する際の7つの視点
1.成果を上げる(成果を大きくするドラッカー思考)
2.価値をもたらす計画をたてる(戦略と計画に関するドラッカー思考)
3.顧客を中心に考える(顧客に関するドラッカー思考)
4.チームを動かす(チームのパフォーマンスを高めるドラッカー思考)
5.マネジメントを極める(プロジェクト品質を向上させるドラッカー思考)
6.イノベーションを実現する(技術を有効に活用するためのドラッカー思考)
7.プロフェッショナルになる(自己成長のためのドラッカー思考)
のうち、これまで1番目から3番目について説明してきた。今回は4番目のチームについてである。
◆貢献がチームワークを可能にする
まず、ドラッカーのチームマネジメントには大きな前提がある。それは、
組織はもはや権力によっては成立しない。信頼によって成立する。信頼とは好き嫌いではない。信じ合うことである。そのためには、たがいに理解しなければならない。たがいの関係について、たがいに責任をもたなければならない。(明日を支配するもの)
という前提である。そして、たがいに理解し、たがいに責任をもつには、計画のところでも出てきた「貢献」が重要である。貢献についてドラッカーは以下の様にのべている。
果たすべき貢献を考えることによって、横へのコミュニケーションが可能になり、チームワークが可能になる。自らの生む出すものが成果に結びつくには誰にそれを利用してもらうべきかとの問いが、命令系統の上でも下でもない人たちの大切さを浮き彫りにする(経営者の条件)
つまり、「貢献を考えることがコミュニケーションを活性化し、チームワークを可能にする」と指摘している。この感覚はいろいろな意味でおもしろい。組織や社会における貢献はすべからくそうだといえなくもない。例えば、以下の2つの問いについて考えて見て欲しい。
あなたが依存しているのは誰か
あなたが影響を与えているのは誰か
この問いについて深く考えていくと、貢献により初めてチームワークが可能になることが容易に分かる。このことはドラッカーの指摘するとおり、命令系統とはまったく別のものである。つまり、チームなのだ。チームにおいては、チームリーダーも果たすべき貢献を考える。それは強力なリーダーシップであることもあれば、サーバントリーダーシップであることもあるだろう。
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