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◆正面突破できない壁
世の中には正面突破ではどうしても突破できないものがある。
例えば、ある商品を開発していた。ところがトライアルのフェーズになって思わぬ法律的な疑念が生じた。商品の仕様を変えることが望ましいが、顧客はどうしてもスケジュールを譲らない。さて、どうしようという問題がある。
この問題をスケジュールの問題だと考える限り、答えはないだろう。いくら大量の要員を投入してみたところで限界はある。治具をうまく使っても限界はある。このような状況でどうすればスケジュールの問題を解消できるのか教えて欲しいと言われても、それは無理というものだ。そもそも論を言えば、現場の作業者が無理と思っているスケジュールを、スタッフや外部の人間が何か名案を出して解決できるかもしれないというのは幻想である。米国ならいざ知らず、日本の現場はそんなレベルではない。
◆問題の定義を変えれば活路が開ける
しかし、この問題をどうにかして欲しいと言われれば、やりようはある。
例えば、この問題は顧客の商品提供が遅れるという問題だと認識すれば、どうだろうか?商品の構成方法を変えて対応できるかもしれない。商品の提供ステップを工夫することによって一層の付加価値をサービスにもたらすことができるかもしれない。ひょっとすると、遅れでも問題ない可能性だってある。
例えば、顧客が競合との競争に負けるという問題だと認識すればどうか?これは簡単そうだ。開発スピードだけで競争している商品というのはだんだん減っている。商品提供の時期を遅らせる代わりに、アフターサービスの品質向上、ブランドの浸透など、リカバリーの方法はいくらでもある。
行き詰まってしまった感じる場合の多くは、その方向性ではどうしようもないというケースである。本当にどうしようもない場合もあるが、上に述べたように、起こっていることを
「どのような問題として定義するか」
を考えることによって、状況が大きく変わることも多い。トコトン考えるというのは、本来、そういうことだろう。
◆パラダイムの落とし穴
ところが、このような思考は耳で聞いたり、口でいうほど容易なことではない。
「パラダイム」
という難敵がいるからだ。パラダイムというと難しく考えてしまうが、「パラダイムの魔力」という本を書いたジョエル・バーカーが非常に適切だと思われる定義をしている。
パラダイムとは、ルールと規範であり、(1)境界を明確にし、(2)成功するため
に、境界内でどう行動すればよいかをおしえてくれるものである
ジョエル・バーカー(仁平 和夫訳)「パラダイムの魔力―成功を約束する創造的未来
の発見法」、日経BP社日経BP出版センター(1995)
と定義し、パラダイムは、誰にでも、何にでもあると指摘している。その上で、
私たちが何を知覚するかは、自分のパラダイムによって決定される
と述べている。問題はこれだ。
マネジメントの哲学者ピーター・ドラッカーもコミュニケーションに関して同じような指摘をしていて、
人は知覚したいものだけを知覚する
と述べている。これらの指摘するところは人間の視野というのはそんなに広いものではなく、異なるパラダイムを持つ傍観者からみていると、笑ってしまうくらいだということだ。
上のスケジュールの問題の例にも明確なパラダイムがある。それは、作業の成果が仕事の成果であるという一種の労働集約型のパラダイムである。
パラダイムの壁のようなものを痛感するエピソードがある。ミニコンピュータで
IBMの大型コンピュータの牙城を見事に打ち破ったDEC社の創業者のケン・オルセンが、アップル社の活動を見ていて、
個人が家庭にコンピュータを持つ理由など見あたらない
といった。そして、DEC社は衰退していき、やがて新興のパソコンメーカに買収された。パラダイムが違うというのはこんなものだ。自分が経験し、成功体験を持っていることですら、パラダイムの外のことにはうまく対応できないのだ。
◆パラダイムを変える魔法の杖「ラテラルシンキング」
そんなパラダイムを変える難しさを解消する魔法の思考法がラテラルシンキングだ。
ラテラルシンキングは、日本では水平思考と呼ばれている思考法。lateralとい
う単語の意味は、横からという意味で、端から見ていると誰もが気づくことに、当
事者は気づかないことが多く、これを意識的に気づけるようにしようというのがラテラルシンキングである。
行き詰まりを感じている人にはぜひ身につけて欲しい思考法である。「ラテラルでいこう」だ。
とりあえず、こちらの連載を読んでみてほしい。
思考を飛躍させるラテラル・シンキング(IVC 山下貴史)
http://www.pmstyle.biz/column/lateral/lateral1.htm
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