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◆プロジェクトリーダーはビジョンを決める
戦略ノート242で述べたように、正しい意思決定をするプロジェクトリーダーと、正しくプロジェクトを実施するプロジェクトマネジャーの両方の役割が必要である。言い換えると、プロジェクトにはプロジェクトマネジメントとプロジェクトリーダーシップが必要である。ここで、いくつか考えるべき点がある。
一つ目は、プロジェクトリーダーは何を意思決定する役割かという問題である。もっともしっくりくるのは、プロジェクトリーダーはプロジェクトのビジョンを決める。つまり、そのプロジェクトが企業や社会にとってどのような役割を果たすプロジェクトにするのか、言い換えるとプロジェクトの目的を決める。そして、プロジェクトマネジャーはそのビジョンを実現する役割になる。
このようなフォーメーションでは、プロジェクトリーダーはプロジェクトスポンサーになることが多い。プロジェクトである目的を達成するためにプロジェクトを立ち上げ、予算をつける。そして、プロジェクトマネジャーを指名し、その目的の達成を委ねる。
◆スペックや技術を決めるリーダー
ところが、IT系のプロジェクトでは、プロジェクトリーダーをプロジェクトマネジャーの補佐にしているケースが多い。プロジェクトリーダーは技術リーダーやチームリーダー的な役割を果たし、スペックや、技術を中心に意思決定を行う。したがって、プロジェクトの方向性を決め、プロジェクトをマネジメントするのはプロジェクトマネジャーになる。つまり、プロジェクトマネジャーはプロジェクトリーダーシップとプロジェクトマネジメントの両方の役割を担う。
少し脱線するが、このようなフォーメーションは、いわゆる「やらせて失敗させて育てる」時代の形である。とにかくアイデアを出すことに集中させ、コストやスケジュールは上位職が「なんとかする」、マネジメントらしいスタイルである。新しい技術を活用した新製品開発プロジェクトなど、技術がプロジェクトの成功に決定的な役割(ドライビングフォース)を果たす場合には有効である。
ITもかつてはそうであった。しかし、現在では技術はコモディティ化しており、あまり有効ではなくなるつつある。そこで技術リーダーにプロジェクトマネジャーの役割を求めるようになってきている。ところが職位上、予算の決裁権などがないことから、予算管理だけは上位管理者が行うといった変則的なマネジメントスタイルがみられるようになってきた。とくに、チームのマネジメント、つまり、チームリーダーとしての役割に重心を置くようになっているプロジェクトが多い。
このことを念頭におきつつ、話をもとに戻す。
◆両雄ならびたつ
ITプロジェクトも数十億規模になってくると、一人のプロジェクトマネジャーがプロジェクトの方向性を決め、マネジメントをするのは不可能である。大規模なプロジェクトをうまく動かせるプロジェクトマネジャーがいないというのはそういうことだ。
そこで、リーダーシップとマネジメントを分離することが考えられた。実は、日本のSIベンダーは以前からそのようなフォーメーションをとっていた。統括リーダーである。統括リーダーがプロジェクトリーダーシップを分担する。そして、その下につくリーダーがプロジェクトマネジメントを担当するというフォーメーションである。
◆リーダーとしてのプログラムマネジャー
このようにプロジェクトリーダーとプロジェクトマネジャーの両方を置くことは珍しいことではない。たとえば、プラントやロケットなど、IT以外のプロジェクトでも大規模なプロジェクトではそのようなフォーメーションがとられている。もちろん、プロジェクトリーダーやプロジェクトマネジャーと呼んでいるとは限らないが、役割分担を見ると、リーダーシップをとる人と、マネジメントを行う人を分けている業界は少なくない。
このフォーメーションが、プロジェクトに必要なリーダーシップとマネジメントを共存させる最も有力な方法である。ただし、中小規模のプロジェクトでは、常に二役を置くことは難しい。そこで、考えられるのが、前回述べた一人二役か、あるいは、一人のプロジェクトリーダーが複数のプロジェクトを立ち上げていくという方法である。これは2つのケースがある。
一つは組織マネジャーとして行う場合である。その場合には、組織のバジェットを達成するために、プロジェクトスポンサーとして複数のプロジェクトのリーダーシップをとる場合である。もう一つは、担当マネジャーとして、個人的なバジェット達成のために、プログラムを立ち上げ、プログラムマネジャーになり、プログラムをマネジメントしていくケースである。
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