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◆回復力、あるいは弾力性
最初のテーマを何にしようかと思って、ふと、頭に浮かんだのがレジリエンス(resilience)である。レジリエンスは一言でいえば、
困難な状況にもかかわらず、うまく適応できる力
であり、カタカナで使われることが多い言葉だが、日本語では回復力とか、弾力性といった言葉があてられる。僕が、レジリエンスという言葉を知ったのは、ある仕事で金井壽宏先生にアドバイスを求めたときに、キーワードとしていただいたことがきっかけである。金井先生は、昨年出版されたポジティブ心理学のワークショップ記録書籍「人勢塾」の中で、以下のように 説明されている。
(レジリエンスとは)ネガティブな逆境、葛藤あるいはポジティブであるが進歩、責任の増大など圧倒されてしまいそうな状況に、立ち向かい、克服し、元の状態にまで跳びはねていく力、さらに、そのような状況に偶然遭遇するだけであく、自らの選択で、安定して快適なゾーンを後にして、なにか新しくて未知なことに乗り出し、途中であきらめずにそれを成し遂げる力を指す。
金井 壽宏編著『「人勢塾」 ポジティブ心理学が人と組織を鍛える』、小学館(2010)
http://people.weblogs.jp/books/2010/04/positive.html
◆レジリエンスが高い人の特性
簡単にいえば、レジリエンスが高い人は
1.ポジティブな未来志向を持ち、
2.感情の調整ができ、
3.新しいものに興味や関心を持ち、
4.忍耐強く、成し遂げる
という人ということだ。人勢塾では、レジリエンスのある人の特性を以下のように示している。
(1)個人の持ち味(アセッツ)には逆境からも将来からはポジティブな結果が生まれると信じる力
があり、逆境が望ましくないことをもたらすかもしれないという確率を高めるリスクを意識しながらも、
(2)ポジティブな結果が生まれる信念がリスクを上回ると信じ、将来展望するビジョンを示し、それを実現可能にする自己の支えになる価値感と信念を持つ
◆レジリエンスを高めるには
問題は、このような力を如何に高めていくかであるが、2つの提案を紹介しよう。
一つは勝間和代さんの3D運動。勝間さんは
「3D運動」の勧め~「できる人が、できることを、できる限り」を合い言葉にしていきませんか?
という運動をされている。
勝間さんについては、ビジネスマンなら誰でも知っていると思うので、改めて紹介しないが、この切り口は、一目見ればすべてわかる勝間さんらしい思慮に富んだ切り口である。
特に地震の後は力を入れておられ、震災後にブログにたいへん、わかりやすい記事を書かれている。(「レジリエンス 勝間」で検索すればトップに出てくる)
もう一つは、田中ウルヴェ・京さんのセルフトークトレーニング。
田中さんは、ご存じない方もいらっしゃるかもしれないが、ソウル五輪シンクロデュエット銅メダリストで、現在はメンタルトレーニング指導士として活躍されている。
田中 ウルヴェ 京「立ち止まってもすぐに前進できる 「打たれ強い心」のつくり方」、
日本実業出版社(2008)
http://people.weblogs.jp/books/2009/01/post-88fc.html
セルフトークトレーニングとは、
(1)自らのセルフトークに気づく
(2)タイプを分類する(いじいじ系、いらいら系)
(3)後ろ向きな言葉をストップする
(4)前向きな言葉に置き換える
という手順で行うメンタルトレーニングである。セルフトークは、レジリエンスを高めるのに有効なトレーニング方法だとされている。この手順の中で、ときに(3)から(4)においてセルフトークを転換するには
・根拠のない決めつけを止める
・いつもじゃなく、みじめになっているのは今だけだと考える
・この人に会っているときだけだと考える
の3つがコツだという。
◆プロジェクトリカバリーにおけるレジリエンスの役割
プロジェクトのリカバリーにおいて、レジリエンスという概念は重要である。挫折する多くのプロジェクトでは、プロジェクトマネジャーもメンバーもレジリエンスが弱く、
ポジティブな結果が生まれる信念がリスクを上回ると信じる
ことができない。このため、ビジョンを描くことができずに、目先の問題の解決に追われる。この状態を苦しいことだと思っている人がいるかもしれないが、この状態は
「安定して快適なゾーン」
だと思われる。先のことを考えずに、目先の問題の解決に追われているのはある種の達成感があり、楽である。本当に苦しいのは、そこから抜け、トラブル脱出のビジョンを描いて前に進んでいこうとするときだ。目先の問題解決というコンフォートゾーンから抜け出すためには、高いレジリエンスが必要である。
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