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◆アクティブ・ノンアクションとは
アクティブ・ノンアクションという概念がある。2年くらい前に、プロジェクトの補助線ブログにこんな記事を書いたことがある。
アクティブ・ノンアクションという問題
簡単にいえば、「忙しいけど、忙しさに見合う成果がでない」現象をいう。スマントラ・ゴシャール先生が著書『意志力革命』で言及し、目的を伴う意識的行動をとっていないことがその原因だと指摘している
確かに、このような現象の原因に目的意識の欠如があるというのはその通りだと思うが、では、目的意識の欠如を引き起こす原因はなんだろうか。
◆目的意識とは何か
ここでポイントになるのは、目的意識とは何かということだ。目的意識とは何かの目的を実現することを最優先に行動することである。そのためには、まず、目的実現のために重要性の低いことはしないことだ。
これが簡単なようで意外と難しい。何が難しいかというと、目的の設定レベルである。
たとえば、情報システムを構築する仕事がある。目的として、情報システムの構築を掲げ、取り組むとする。すると、情報システムの構築にあまり貢献しない行動はしないことになる。たとえば、顧客ビジネスの理解である。顧客がどのような業務を行っており、システムに何を要求しているかは丹念に調査するが、顧客自身を理解しようとはしない。たとえば、顧客はどのような価値観を持っているか、顧客はどのようは戦略を持っているか、顧客はどのような事業を営んでいるか、顧客の顧客はどのような会社か、顧客はどのようにして利益を上げているか、といった顧客のビジネスを知ろうとしない。
もちろん、コスト勝負の工賃仕事であればそれで十分だ。しかし、顧客にもう少し、大きな期待があれば、これではうまく行かない。顧客の表現できる要求は完全なものではなく、プロジェクト期間中に顧客が新しい要求に気づくことがあるからだ。
では、プロジェクトの目的を「情報システムによる顧客のビジネスへの貢献」とすればどうだろうか。今度は顧客ビジネスを理解することは目的意識に基づく行動に含まれる。
◆なぜ、踏み込んだ目的設定をしないのか
なぜ、このような目的を設定しようとしないのか。いくつか原因があるように思う。まず、自分たちのビジネスの範囲外だと考えることだろう。確かに、顧客のビジネスを改善すること自体はプロジェクトのスコープではないかもしれない(著者はそうは思わないが)。
しかし、プロジェクトの目的は本来戦略的なものである。つまり、戦略から考えるとどのような目的を設定すればいいだろうという発想で設定するのもよいが、戦略にできるだけ貢献し、現実との折り合いもつけるにはどのような目的を設定すればよいかと考えることが必要である。これが本当の意味で戦略の理解である。この点を十分に理解しておく必要がある。
二つ目の理由は、顧客の世界に入れないという問題だ。確かに、ITベンダーが顧客のビジネスに不用意に入り込んでしまうことは顧客を警戒させ、その後のプロジェクトの運用を難しくするリスクがある。
しかし、最近の傾向でいえば、顧客も行き詰っており、ベンダーではなく、パートナーとしての役割を求める顧客が増えている。だからといって、いきなり、IR報告にも載っていないような情報の開示を求めても相手にされるはずがない。調査で外堀を埋めて、それに基づく提案をし、そこから胸襟を開かせるようなアプローチが必要である。著者の知り合いのIT企業で、プロジェクトの立上げの際に調査会社を使って調査をしている会社がある。このくらいの努力は必要だろう。
三つ目の理由は、そのような目的が考えられないことである。システムを作ることを最終目的にしたのでは不十分だと分かっても、では、どのような目的を設定すればよいのかは難しい。
上の「情報システムによる顧客のビジネスへの貢献」という例は説明用のおおざっぱな例なので、これだとできると思うが、システムを作るという目的から、もう少し、上位にある具体的なビジネス貢献という目的へ視座を変えることは意外と難しい。一つには、二番目の理由で述べた顧客の情報をきちんと取れないということがあるが、とれたとしても、ビジネスへ貢献するのがいいのか、問題に貢献するのがいいのかといった判断が必要になる。これが結構、難しい。
◆具体的過ぎる目的設定がアクティブ・ノンアクションの一因
ここで考えたいことは、最初のようなレベルの目的設定がアクティブ・ノンアクションを引き起こす一因であるということだ。上に述べたとおり、プロジェクトの実施中に変更が発生し、調整をやむなくされる。この調整により顧客の要求が充足されるので一見成果に結びついているように見えるが、要求間の整合性が低く品質が下がる。加えて、この種の要求は枝葉末節の要求であることが多く、その調整行動に見合う成果であることは少ないだろう。
これに対して、目的のレベルを上げると一見、本来の業務とは関係に薄いことをやっているように見えるが、全体から部分を絞り込んでいくため、要求をうまく取り入れたデザインをすることが可能になり、調整に走り回る必要がないので、目的の実現に寄与しない工数も削減できる。つまり、アクティブ・ノンアクションが解消される。
◆アクティブ・ノンアクションにならない目的設定
さて、では、どのようにすれば、アクティブ・ノンアクションを解消するような目的の設定ができるのか。面白い話がある。
ハーバード大学のロバート・カッツは、マネジャーに求められる能力として、テクニカル・スキル、ヒューマン・スキル、コンセプチュアル・スキルの3つがあるとし、新任マネジャーにおいてはテクニカル・スキル、徐々に上位のマネジャーになっていくにつれて、ヒューマン・スキルが重要になり、最終的には、コンセプチュアル・スキル(概念化スキル)が重要になると指摘した。
ロバート・カッツの説を目的の設定に当てはめると、最初はマネジメントの教科書を見て、目的の設定方法を学ぶ。それだけでは不十分で、顧客や部下との対人影響力がないと適切な目的設定ができないことに気づく。しかし、プロジェクトの規模が大きくなると、ステークホルダが多くなり、概念的に目的を練り上げていかないと主要ステーホルダの協力を引き出すことは難しくなる。
詰まるところ、概念化スキルがなくては、アクティブ・ノンアクションを解消するような目的の設定はできないということだ。
ここでポイントになるのは、目的意識とは何かということだ。目的意識とは何かの目的を実現することを最優先に行動することである。そのためには、まず、目的実現のために重要性の低いことはしないことだ。
これが簡単なようで意外と難しい。何が難しいかというと、目的の設定レベルである。
たとえば、情報システムを構築する仕事がある。目的として、情報システムの構築を掲げ、取り組むとする。すると、情報システムの構築にあまり貢献しない行動はしないことになる。たとえば、顧客ビジネスの理解である。顧客がどのような業務を行っており、システムに何を要求しているかは丹念に調査するが、顧客自身を理解しようとはしない。たとえば、顧客はどのような価値観を持っているか、顧客はどのようは戦略を持っているか、顧客はどのような事業を営んでいるか、顧客の顧客はどのような会社か、顧客はどのようにして利益を上げているか、といった顧客のビジネスを知ろうとしない。
もちろん、コスト勝負の工賃仕事であればそれで十分だ。しかし、顧客にもう少し、大きな期待があれば、これではうまく行かない。顧客の表現できる要求は完全なものではなく、プロジェクト期間中に顧客が新しい要求に気づくことがあるからだ。
では、プロジェクトの目的を「情報システムによる顧客のビジネスへの貢献」とすればどうだろうか。今度は顧客ビジネスを理解することは目的意識に基づく行動に含まれる。
◆なぜ、踏み込んだ目的設定をしないのか
なぜ、このような目的を設定しようとしないのか。いくつか原因があるように思う。まず、自分たちのビジネスの範囲外だと考えることだろう。確かに、顧客のビジネスを改善すること自体はプロジェクトのスコープではないかもしれない(著者はそうは思わないが)。
しかし、プロジェクトの目的は本来戦略的なものである。つまり、戦略から考えるとどのような目的を設定すればいいだろうという発想で設定するのもよいが、戦略にできるだけ貢献し、現実との折り合いもつけるにはどのような目的を設定すればよいかと考えることが必要である。これが本当の意味で戦略の理解である。この点を十分に理解しておく必要がある。
二つ目の理由は、顧客の世界に入れないという問題だ。確かに、ITベンダーが顧客のビジネスに不用意に入り込んでしまうことは顧客を警戒させ、その後のプロジェクトの運用を難しくするリスクがある。
しかし、最近の傾向でいえば、顧客も行き詰っており、ベンダーではなく、パートナーとしての役割を求める顧客が増えている。だからといって、いきなり、IR報告にも載っていないような情報の開示を求めても相手にされるはずがない。調査で外堀を埋めて、それに基づく提案をし、そこから胸襟を開かせるようなアプローチが必要である。著者の知り合いのIT企業で、プロジェクトの立上げの際に調査会社を使って調査をしている会社がある。このくらいの努力は必要だろう。
三つ目の理由は、そのような目的が考えられないことである。システムを作ることを最終目的にしたのでは不十分だと分かっても、では、どのような目的を設定すればよいのかは難しい。
上の「情報システムによる顧客のビジネスへの貢献」という例は説明用のおおざっぱな例なので、これだとできると思うが、システムを作るという目的から、もう少し、上位にある具体的なビジネス貢献という目的へ視座を変えることは意外と難しい。一つには、二番目の理由で述べた顧客の情報をきちんと取れないということがあるが、とれたとしても、ビジネスへ貢献するのがいいのか、問題に貢献するのがいいのかといった判断が必要になる。これが結構、難しい。
◆具体的過ぎる目的設定がアクティブ・ノンアクションの一因
ここで考えたいことは、最初のようなレベルの目的設定がアクティブ・ノンアクションを引き起こす一因であるということだ。上に述べたとおり、プロジェクトの実施中に変更が発生し、調整をやむなくされる。この調整により顧客の要求が充足されるので一見成果に結びついているように見えるが、要求間の整合性が低く品質が下がる。加えて、この種の要求は枝葉末節の要求であることが多く、その調整行動に見合う成果であることは少ないだろう。
これに対して、目的のレベルを上げると一見、本来の業務とは関係に薄いことをやっているように見えるが、全体から部分を絞り込んでいくため、要求をうまく取り入れたデザインをすることが可能になり、調整に走り回る必要がないので、目的の実現に寄与しない工数も削減できる。つまり、アクティブ・ノンアクションが解消される。
◆アクティブ・ノンアクションにならない目的設定
さて、では、どのようにすれば、アクティブ・ノンアクションを解消するような目的の設定ができるのか。面白い話がある。
ハーバード大学のロバート・カッツは、マネジャーに求められる能力として、テクニカル・スキル、ヒューマン・スキル、コンセプチュアル・スキルの3つがあるとし、新任マネジャーにおいてはテクニカル・スキル、徐々に上位のマネジャーになっていくにつれて、ヒューマン・スキルが重要になり、最終的には、コンセプチュアル・スキル(概念化スキル)が重要になると指摘した。
ロバート・カッツの説を目的の設定に当てはめると、最初はマネジメントの教科書を見て、目的の設定方法を学ぶ。それだけでは不十分で、顧客や部下との対人影響力がないと適切な目的設定ができないことに気づく。しかし、プロジェクトの規模が大きくなると、ステークホルダが多くなり、概念的に目的を練り上げていかないと主要ステーホルダの協力を引き出すことは難しくなる。
詰まるところ、概念化スキルがなくては、アクティブ・ノンアクションを解消するような目的の設定はできないということだ。
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