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◆小さくて大きいこと
プロジェクトイニシエータはプロジェクトを起こすときに何に着眼するのだろうか?
・戦略
・ビジネス
・顧客・市場
など、いくつかのポイントがあると思われる。もちろん、このような視点は大切なのだが、もっと重要なのはインパクトである。プロジェクトイニシエータは
小さくて大きい
ことに関心を示す。
プロジェクトイニシエータのイメージは、組織の中で画策して、大きな予算のプロジェクトを立ち上げたり、顧客に対してうまく立ち回り大きな受託業務を取ったりするようなイメージではない(もちろん、これらも立派なイニシエーションであるが、イニシエータらしい仕事とはいえないだろう)。
◆イニシエータのキーワード
イニシエータを特徴づけるキーワードを一つ上げるなら、活性化、あるいは、「ノリ」である。
大きな成果を得られる小さなテーマを洞察する。そして、小さなテーマを実行に移す。小さなテーマに多くの人を「巻き込んで」いく。小さくて大きい仕事には、この巻き込みが重要である。
巻き込みによって、プロジェクトが活性化される。メンバーがのってくる。プロジェクトは進んでいく。そこで、自己組織化が起こり、テーマが飛び火していく。ソーシャルネットワークの世界である。
◆かつてイニシエータとして手掛けた仕事
僕がかつて手がけた仕事で、ある地域の地域情報化の仕事がある。インターネットが普及する前の時代の話である。地域にインターネットのような情報網を作りたい。文化、観光、生活、行政、ビジネス、施設など、さまざまな発信したい情報がある。しかし、その地方自治体はすべてを賄うほと、財力はない。
そこで、議論の末、考え出された方法がインフラ提供だった。ネットワークとデータベースのインフラを構築する。そこに、呼び水になる数個のアプリケーションを載せる。そうすることによって、いろいろな人たちが自分たちにメリットのある分野で、そのインフラを使ったアプリケーションの開発をする。ネットワーク全体としては、アプリケーションが増えることによって価値が増す。アプリケーション間では、相互が連携することによってシナジーが生まれる。たとえば、観光地がある。観光のシステムから観光の情報を得ることができる。同時に、施設の予約のシステムからその近くで食事の予約をできる。
今では、インターネットで当たり前に行われている仕組みだが、これをインフラの提供という小さなテーマを呼び水に、地域情報ネットワークという大きなテーマにしたのは、まさにイニシエータの仕事と呼ぶにふさわしい仕事だと思っている。
◆イニシエータの武器はシステム思考とレバレッジ
こういう企画をするには、どういう発想が必要か?システム思考である。ビジョンをシステムとして描く。その中で、レバレッジ(テコ)を探す。最少の投資(努力)で最大の成果を得るためには何をすればよいかだ。
レバレッジで有名な話は、ジュリアーニニューヨーク市長が行った、重犯罪を減らす取り組みである。防犯強化というと、すぐに思いつくのは警官の数を増やすことである。ところが、これだと実際にはいたちごっこになる。そこで、ジュリアーニ市長がとった手段は、軽微な犯罪の取り締まり強化と地下鉄の落書きを消すという、重犯罪とは一見関係のない方法だった。
ところが、これで、重犯罪は一挙に40%減った。この話には、ブロークンウィーンドウ理論(壊れ窓理論)という理論的な裏付けがあるのだ、それもしても見事なレバレッジを使った活動のプランだと言える。
もう一つ例を上げよう。道路を整備すると、一旦渋滞が解消されるが、渋滞が解消されると交通量が増え、再び渋滞が増えるという現象がある。ストックホルムでは道路を整備するのではなく、都市部の制限速度を下げ、道路のスピードを出しにくくすることによって、渋滞を40%減らすことに成功した。スピードを出しにくくなると、当面は渋滞がひどくなる。しかし、それによって交通量が減ればやがて渋滞は減っていく。これも見事なレバレッジを使ったプラニングである。
このように小さな効果で大きな成果を生むポイントは、本来の問題とは一見関係ないところにあることが少なくない。これを洞察しなくては「小さくて大きなこと」は企画できないが、そのためのツールとしてシステム思考は強力なツールになる。
まさに、イニシエータの武器だと言えよう。
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