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◆アイデアを誰が出すか
イノベーションに不可欠なものは、アイデアである。マネジャーとして考えることは、自分が考えるのではなく、アイデアの生み出し方だ。部下から革新的なアイデアが生まれてこないとしたら、その原因は部下自身ではなく、マネジャーにあることが多い。
自分で考える習癖のあるマネジャーは、製品開発やITのプロジェクトの遂行において、直面する問題に対して「実現可能な課題」まで落とし込んでしまう傾向がある。部下は経験不足だからとか、いろいろと理由をつけるが、結局のところ、そのプロジェクトの失敗はマネジャー自身に×がつくという理由が大きいのではないかと思う。自分ができないことはやらないし、部下にもさせない。
このようなマネジャーが、イノベーションの阻害要因になっているケースは極めて多い。この問題については、最後にもう一度、触れたい。
◆部下にイノベーティブな行動をさせるには
さて、部下にイノベーティブな思考や行動を起こさせるためのもっとも効果的な方法は、難題にチャレンジさせることである。難題とは、マネジャー自身が答えの見えていない問題である。どうすれば、プロジェクトの工数を半分にできるか、どうすれば顧客を喜ばせることができるかといった問題だ。
では、具体的にどのようにするのか。著者は、以下の2つを実践するように進めている。
(1)プロジェクトの目的に必ずイノベーションを入れる。
(2)プロジェクトの目標に難題を入れる。
の2つである。ここでポイントになるのが、プロジェクトで行う業務をプロジェクトの目的としないことだ。
こういう言い方をすると誤解されるかもしれないが、製品を開発するのであれば、その製品を開発すること自体ではなく、その製品を以って何をしたいかをプロジェクトの目的とする。情報システムを顧客に収めるのであれば、その取引を持って何をしたいか(顧客のビジネスにどのように貢献したいか)をプロジェクトの目的とする。
製品や情報システムの開発を目的としてしまえば、そこで完結し、プロジェクトにイノベーションという目的を入れても、製品や情報システムに反映するのは難しい。目的が実現されたかどうかが1/0で明確になるので、製品やシステムができたところで満足してしまうのだ。満足をすることはイノベーションの敵である。
これに対して、開発した製品を以って何かをしたいということがプロジェクトの目的であれば、ここまでやればOKというのは設定しにくいので、満足もできない。時間と予算の範囲で、最大の成果を目指す。
ここにイノベーションという目的がオーバーラップすると、最大の成果を上げるために、これまでにやっていないことをやろうという発想が生まれることだ。もちろん、製品やシステムは完成させなくてはならない。この2つを達成するために、いろいろなアイデアが出てくる。その中に、2つや3つは、斬新なものがあるだろう。
◆アイデアは数が必要
アイデアについて考えるときに、イノベーションをもたらすアイデアは画期的なものであると考え、一発ホームランを狙うような思考方法をする。このような方法は成果が出にくい。ブレーンストーミングというアイデア出しの方法があるが、ブレーンストーミングをやると、あるところまでは活発にアイデアが出てくる。しかし、それは常識的なものばかりである。そして、発言が止まり、ある発言をきっかけにまた、議論が活性化することがよくある。
ここで何が起こっているかというと、常識を捨てる、前提を変えるといったことを誰かが行い、みんながそれに気づいて同じような発想を始める。有効なアイデアはこの段階で出てくることが多い。
これと同じように、アイデアを出すときには、せっぱつまってこないと従来の思考の枠組みから出たアイデアは出てこない。だから、アイデアを出すときには、ブレーンストーミングのように数が必要である。ブレーンストーミングには出てきたアイデアを否定しないというルールがあるが、現実にアイデア出しをするときには、アイデアを却下しながら進めることが多い。この際に重要なことは、一旦、却下されたアイデアでも再び、検討するという柔軟な姿勢である。
◆プレイングマネジャー問題について
最後に、プレイングマネジャー問題に触れておきたい。従来からサービス業や飲食などは、プレイングマネジャーが普通だったが、最近はどのような業界でも人が減り、プレイングマネジャーが増えている。
イノベーションが置きにくくなっている一因にこの問題があるように思う。プレイングマネジャーは業績を作ることが任務である。これに対して、マネジャーは業績と未来を作ることが任務である。
業績を作るためには、自分を中心に業務を進めていくのが手っ取り早い。これがイノベーションンの阻害要因になっているのではないかと思う。
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