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情報サービス産業協会(JISA)の浜口友一会長が興味深い発言をされている記事が日経BP社のサイトに掲載されていた。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070831/280932/
一部を抜粋すると
「止めてはいけない重要なシステムは、世の中にどれだけあるのだろうか。ベンダーや顧客、マスコミも交え、もっと議論すべきだ」
という発言。浜口会長の意見を好川流に解釈すれば、情報システムの品質マネジメントは「思考停止に陥っている」という問題提起である。浜口会長のような立場の方がよくぞ、言ってくれたと思う。拍手喝采!
プロジェクトマネジメントの方針を決める場合に、「品質は絶対」だとよく言う。これは正すべきである。コンサルティングや研修などの機会に口をすっぱくしていっているのが、「品質絶対だというな!言った瞬間に思考停止に陥る」ということだ。
実際に、コンサルにしろ、研修にしろ、書かれたプロジェクトマネジメント計画書を見ると例外なくプロジェクトマネジメント方針として品質絶対と書いている。気持ちはわからないでもないが、これは明らかにおかしい。
「プロジェクト品質絶対」
だと書くのであれば、まだわかる。プロダクト品質絶対などありえない。これはプロジェクトのスコープを決めていないに等しい。まさに、思考停止である。
プロジェクトマネジメントを少し離れるが、顧客満足について考えてもらうときに使うエピソードに、「ある会社で壁に「顧客絶対主義」だと書いてあった。顧客絶対主義では顧客は満足しないだろう」というのがあるが、品質の話もこの話に通じる。
品質絶対で顧客が本当に満足するのか?もっと大きく言えば、浜口会長の発言にあるように社会的コンセンサスとして社会が求めているものなのか?
結論を出す前に、まず、なぜ、こんな状況に至ったかを述べておく。一般的にいえば、品質コストは
予防コスト<評価コスト<不良品対応コスト
という順序になる。従って、できるだけ不良品を出さないようにすることが品質コストを下げることに通じる。従って、まずは不良品を出さないプロセスや設計に力を注ぐ。それが難しい場合にはテストや検査を徹底する。それでも、どうしようもない場合にはアフターフォローに力を注ぐ。当然、順に利益が小さくなる。
ただし、この構図は商品ライフサイクルが短い場合の話であって、一定のサイクルより短くなると成立しなくなる。もちろん、「知覚品質」やブランドイメージの問題があるので一定の品質の保証は必要だが、それ以上は、不良品が出たときに対応する方が品質コストが安くなる。この典型が携帯電話のソフトウエアである。最近の携帯電話は、発売時にパッチが出ていることは珍しくない。商品の特殊性もあるが、それを顧客もそんなに大きな問題だとは思わない。むしろ、早く対応してくれる、誠実に対応してくれる方が重要だと考えているユーザが多い。
つまり、顧客が求めていない(基本)品質を提供していれば顧客満足には結びつかない。提供者はこのことをよく知るべきである。
ここで注意すべきことは、商品価格が変わらなければ、「必要のないものでも求める特性がある」ことだ。顧客満足にとって、何よりも大切なのは、余計なものを捨てることによって価格は下がるという事実を顧客に伝えることである。
プロジェクトの品質の問題に戻るが、SIプロジェクトの品質にはこの視点が抜けていることが多い。テストは重要であるが、ユーザにとって重要なのはテスト結果ではなく、稼動の保証を如何にしてくれるかだ。そんなに難しいことではない。品質絶対のために、形骸化してしまった、MTBF、MTTRなどの概念を昔どおりにスコープに明確に入れることだ。
もちろん、そこでは、品質絶対などといった思考停止をせずに、仕様、コスト、納期、ライフサイクルマネジメントとの関係をきちんと検討し、バランスをとり、ステークホルダを納得できる答えを導くことが肝要である。
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