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◆Der liebe Gott steckt im Detail
神は細部に宿る(Der liebe Gott steckt im Detail)という言葉がある。誰の言葉か不明だが、ドイツの建築家L. M van der Roheが世の中に広めたというのが定説になっている。
もともと、建築について言及した言葉だが、いろいろな使われ方をしている。問題は意味(解釈)だが、これまた、さまざま。細部の細かなところまでこだわるといった使い方をしているケースもあるし、逆に、細部が全体に統合されなくてはならないという意味に解釈している人もいる。結局のところ、この2つは同じことなのかもしれない(であるべきということ)。
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◆なぜ、商社が成り立つのか
PHPから発行されている雑誌「Voice」から、雇用問題をテーマに記事を選んで一冊の本が発行された。
「クビ切り不要!」
という本だ。
この中に、伊藤忠商事会長の丹羽宇一郎氏と東京理科大学教授の伊丹敬之先生の対談記事が採録されている。「人を大切にする経営」という記事。伊丹先生は一橋大学の時代から、人本経営を説かれている方である。
この記事がたいへん、おもしろい。この中に、総合商社に関する伊丹先生のこんな発言がある。
商社という組織の経営がなぜ成り立つかというと、まさにチーム力があるからです。アメリカ型の「あなたの役割はこれ」と、仕事を分解していくようなやり方では、とてもできません。それこそ、人のつながりを大事にして、安定的にやっていくからこそ、組織全体が発展する。これは商社に限らず、製造業も銀行も皆一緒でしょう。
(同書、22p)
これに対して、丹羽氏が答える。
じつは伊藤忠商事で昔、日本の商社と同じものをアメリカにつくってほしいと頼まれ、人を派遣したことがあります。ところが絶対に成功しない。彼らは個人主義ですから、隣の人と同じチームでやれといってもどうもうまくいかない(同書、22p)
なるほどと思った。
総合商社は、日本が世界に誇るビジネスモデルである。このやりとりを読んで、ずっと昔から、もやもやしていた2つの疑問が氷解したような気がした。
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◆プロジェクトマネジメントの2つのスタイル
プロジェクトマネジメントには2つのスタイルがある。
一つは、「システム工学」によるプロジェクトマネジメントである。システム工学というのは、「システム論」、「数理計画法」、「オペレーションズリサーチ(意志決定論)」、「ネットワーク論」、「制御工学」、「情報処理や計算」などを含む学問の体系であり、PMBOKに代表されるようなこれらの理論を使ったプロジェクトマネジメントの手法がこの記事でいう「システム工学」によるプロジェクトマネジメントである。ここでは、これをシステム工学型プロジェクトマネジメントと呼ぶことにする。
プロジェクトマネジメントという場合、一般的にはこれを意味している。
もうひとつは、「チームワーク」によるプロジェクトマネジメントである。こちらのスタイルは、そもそも手法として明確になっているわけでもなく、言ってしまえば、今までのマネジメントに対する知見を総動員して、「プロジェクトをマネジメントする」という感覚である。その中で、比較的、体系化された手法としてはアジャイルプロジェクトマネジメントがある。ここでは、チームワーク型プロジェクトマネジメントと呼ぶ。
専門性ということでいえば、システム工学型プロジェクトマネジメントはかなり、専門性の高いものである。これに対して、チームワーク型プロジェクトは、一般的なマネジメントの方法を「プロジェクト」に適用しようとするところに原点があり、マネジメント手法に対する専門性はあるとしても、マネジャーにとってそんなに専門性が要求されるものではない。
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◆50%以上のプロジェクトがトラブっている?!
プロジェクトマネジメントの導入後も「プロジェクトがトラブルった」という話はあちこちで聞く。弊社では半年~1年かけて10日間を使うPM養成講座という研修をやっているのだが、だいたい、この期間にプロジェクトにおける何らかのトラブル対応で一度は欠席する人は、平均的で50%はいるように思える。
少ない企業でも60~70%ということだろうか。もちろん、これはトラブルの対応を研修より優先するための欠席であって、その中にはトラブルに陥らないように対策を打つというのが含まれてくると思われるので、この数字がトラブルそのものの発生確率というわけではないが、それにしてもかなりの確率であることは間違いない。
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◆マネジャーの成果は人を使って、仕事に対して期待された成果を出すこと
昨日、PMstyleの会員を対象にした第5回のプライベートセミナーを行った。そのときに、参加された方と講師の間で議論になったことの一つが「プロジェクトマネジャーの成果は何か」という議論。とてもよい議論だった。
講師の國貞克則さん(ボナ・ヴィータ コーポレーション)はドラッカースクールの出身だけあって、ドラッカー先生の意見を引っ張ってこられ、
マネジャーの成果は人を使って、仕事に対して期待された成果を出すこと
だと断言された。われわれは、この言葉をもっと真剣に考えるべきであろう。
ドラッカー博士の伝説的な講演場面にこういうのがある。講演の聴講をしているマネジャーに「あなたの仕事は何か」と聞いて、いろいろ答えさせる。圧倒的に「成果を挙げること」という答えが多いところで、おもむろに、「そうではないでしょう。そのような成果を挙げる人を育てたり、成果が出るように動機付けをすることが仕事なのではないですか」と指摘するというのだ。今、聞けば当たり前だと思う人も少なくないと思うが、数十年前の話だ。今、主流になりつつあるマネジメントの考え方を作った一場面として語り継がれている。
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◆マネジメントには正解はない。
この言葉自体はだんだん浸透しているように感じることが多いが、実態はどうか?
ずっと僕が思って気になっていることがあって、この本を読んでいたら、同じことが書いてあったので、この際、虎の威を借りて、言ってみようと思う。
藤井 清孝「グローバル・マインド 超一流の思考原理―日本人はなぜ正解のない問題に弱いのか」、ダイヤモンド社(2009)
ちなみに、藤井さんは最近、テレビのコメンテータなどもされているのでご存じの方が多いと思うが、マッキンゼーでコンサルタントをされたあと、ケイデンス、SAPなどいくつかの企業で社長をされた後に、ルイ・ヴィトンの日本法人のCEOをつとめられ、現在はベター・プレイスという電気自動車の電池のインフラを事業化する会社の日本法人の代表取締役である。
これで藤井さんは十分に虎になったと思うので、そろそろ、藤井さんの指摘を紹介しよう。この本で藤井さんは、日本人は正解があると正解に向けての問題解決においてすばらしい能力を発揮するが、正解がないとうまく対応できない。これがグローバル社会で成功できない理由であると指摘されている。ここまではよくある指摘。
続きを読む "【補助線】「正解への呪縛」から解き放たれる" »
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昨年末に、新しいバージョンのPMBOK(R)が出た。
日本には2万人以上のPMPがいる。一方で、未だに、「プロジェクトマネジメントの定着化」といったセミナーをやると多くの人が参加してくれる。どういうことなのだろうか?
4年に一度の機会なので、少し、いくつかの視点から論考してみたい。
◆米国組織の特性
冷泉彰彦さんという方が、
冷泉 彰彦「アメリカモデルの終焉、金融危機が暴露した虚構の労働改革」、東洋経済新報社(2009)
の中で、米国企業における成果主義の前提となっている組織の特性をいろいろと解説してくれている。この本を読んでいると日本で米国流のプロジェクトマネジメント(PMBOK)がうまく行くには、ドキュメント化vs暗黙知といった表面的な話ではなく、成果主義同様、相当な制度と価値観の変革が必要だと思い知らされる。
ヨコの軸:同じレベルの他の同僚との間で、お互いの守備範囲をどう決めているか
タテの軸:一人の社員が上下関係の中でどう位置づけられているか
時間軸:長い年月の中で評価対象期間がどういう意味を持つか
の3つの軸を設定して説明している。詳しくは本を読んで戴くとして、かいつまんで説明する。
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1.プロジェクトのミッションは何か
2.プロジェクトのステークホルダは誰か
3.ステークホルダにとっての価値は何か
4.プロジェクトにとっての成果は何か
5.プロジェクトの計画は何か
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◆あるエクスサイズ
なかなか、貴重な体験をした。PMstyleのコミュニケーションマネジメントのセミナーを受講された方は記憶にあると思うが、X-podというレゴブロックを使って、プロジェクトマネジャーの指示で40部品くらいのロボットを組み立てるグループエクスサイズがある。
プロジェクトマネジャーが完成図や組み立て図を別の場所で見てきて、メンバーに指示を出して設計図通りのロボットを完成させるというエクスサイズで、コミュニケーションの難しさを体感すると同時に、コミュニケーションスキルを磨くことを目的に行うエクスサイズである。
エクスサイズでは、最初は何もせずに、とりあえず、取り組んでみる。すると、まず、完成できるチームはない。過去に実施した回数は三桁だが、1回目で完成したチームは一桁にとどまっている。1回目での成功理由は、「プロジェクトマネジャーが絵を描くのが早く、うまい」、「レゴフリークがたまたまチームにいた」の2つで100%である。
2回目は1回目の経験を振り返り、コミュニケーションのルールを決めたり、あるいは、チーム内のメンバーの連携の方法を決めたりして望む。すると、4グループあれば、だいたい、2~3グループは完成することができる。
先日事情があって、このエクスサイズをあるIT企業でルール変更して行った。プロジェクトマネジャーが完成図や組み立て図を見ている時間をコストに見立てて行い、途中でインストラクターが予算カットを指示するというルールを追加した。すると、おもしろいことに、2回目も1チームも完成できなかった。
4チームのうちの3チームはほぼ、完成しているのだが、微妙なところで間違っていた。振り返りで、間違った理由を聞くと、3チームとも「コストが気になって、きちんと最後の確認できなかった」ということだった。
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