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◆あなたは大野耐一になれるか?
トヨタウェイのエバンジェリスト若松義人氏が書いた「大野耐一から学んだトヨタ鬼十訓」という本の中に、こんな話が出てくる。
新車の生産性向上のプロジェクトの一環で、社員のD氏がカンバン方式の指導で部品メーカに行った。この部品メーカはカンバン方式を取り入れて間もないところで、カンバンの紛失が相次ぎ、機能していない状況だった。
このままでルールを守っていれば受注を受けても生産ができず、部品メーカはもちろん、トヨタ自身が困ると考え、カンバンを増発した。これを知った大野氏は「カンバンを探しもせずに、勝手に増発するとはどういうつもりだ」と叱ったという。
プロジェクトマネジャーの上司、あるいはプロジェクトスポンサーであるあなたは大野耐一になれるだろうか?
◆大野耐一の不在に泣くプロジェクト
ミドルマネジャー研修やシニアマネジャー研修のような場でこの話を聞くと大方の人は、大野氏のようにするという。しかし、現場を見ていると、D氏がとった行動を示唆したり、あるいはひどい場合には指示しているケースが多い。黙認しているケースも含まれると、大野氏支持派より、D氏支持派の方がマジョリティのように思える。
プロジェクトマネジャーと対話をしていると、プロジェクトで重大な問題が発生したときにプロジェクトを止めて考えることはできないという人が圧倒的に多い。走りながら考えるしかないという。つまり、D氏になっている。
なぜだろうか?大野耐一がいないからだ。
プロジェクトを預かっているとしても、組織に影響があるリスクは取りにくい。そのため、もっと有効な策があるとしても、応急処置で終わってしまうことが多い。スケジュールが遅れてきたら外注を投入する、コストがオーバーしそうになったら外注の質を下げ、コストも下げる。
プロジェクトマネジャーがリスクを取らずにできることはここまでだ(といっても、このような応急処置こそ、リスク源なのだが、、、)
◆上位マネジャーは忙しい
そのようなリスクを取りたければ、相談に来いという上位マネジャーも少なくない。これはナンセンスである。自らがそういう大局的な判断を自発的にできるだけの時間が取れないマネジャーに相談したところで、(能力はあるかもしれないが)埒があかない可能性の方が高い。まず、判断に至ったロジックを説明するだけでも一苦労。さらに、リスクを取るという場合には、判断に加えて、決断が入る。決断した理由など相手が納得できるように説明できるものではないし、そもそも、説明するものでもないだろう。
では、なぜ、ひとつひとつのプロジェクトに対応できないのか?答えは単純だ。多くのプロジェクトを抱えていること、そして、プロジェクト以外にもやるべきことが多いからだ。
そこで、ここだけは押さえておこうということで、自分なりに工夫して、プロジェクトの報告を受けたりしている。
◆上位マネジャーとプロジェクトマネジャーの意識のずれをスポンサーシップで解消する
ところがそのポイントが、プロジェクト側が見ておいてほしいポイントとずれているのだ。これが最大の問題である。ただし、この場合、組織の中の力関係として上位マネジャーの方が強いので、プロジェクトマネジメントがゆがめられることになる。さすがに最近では減ってきたが、計画を細かく作っている暇があったら作業をしろという上位マネジャーは絶滅しているわけではない。
米国では、上位マネジャーがどのように振る舞えばプロジェクトマネジメントが機能し、プロジェクトの成功に結び付くかというところに体系的なノウハウがある。それは「プロジェクトスポンサーシップ」という形で整理されている。何回か、このプロジェクトプロジェクトスポンサーシップについて書いてみたい。
大野耐一を目指して!
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