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◆50%以上のプロジェクトがトラブっている?!
プロジェクトマネジメントの導入後も「プロジェクトがトラブルった」という話はあちこちで聞く。弊社では半年~1年かけて10日間を使うPM養成講座という研修をやっているのだが、だいたい、この期間にプロジェクトにおける何らかのトラブル対応で一度は欠席する人は、平均的で50%はいるように思える。
少ない企業でも60~70%ということだろうか。もちろん、これはトラブルの対応を研修より優先するための欠席であって、その中にはトラブルに陥らないように対策を打つというのが含まれてくると思われるので、この数字がトラブルそのものの発生確率というわけではないが、それにしてもかなりの確率であることは間違いない。
◆トラブルとは何か?
では、トラブルとは何か?という話になってくる。
トラブルの定義などないと思うが、計画と実績の差異のレベルは3つに区別できる。
レベル1:現計画(ベースライン)に回復できそうである
レベル2:現計画への回復は困難だが、プロジェクトに与えられた制約条件はクリアできそうである
レベル3:プロジェクトの制約条件をクリアするのは困難である
通常、トラブルというのはレベル3のことを指している。一つだけ注意して欲しいのは、回復もクリアも「できそう」であって、「できる」ではないこと。同様に、「困難」であって、「不可能」ではないこと。つまり、よい意味でも悪い意味でもリスクがつきまとう話であることだ。
◆判断基準の明確化は難しい
次に誰もが考えることは、基準を標準化することだが、そんなに単純ではない。例えば、スケジュールでみたときに、ある時点では25%の遅れがあったとしよう。どういう事情であるにせよ、これが「問題」であることは間違いない。ここでまず考えなくてはならないのは数字の持つ意味。
この25%はどういう25%なのかという問題だ。想定されるケースは以下の通り。仮にプロジェクト期間を均一な期間1~5の5つに分けて考えてみよう。すると
(a)期間1(序盤)開始時で25%遅延
(b)期間5(終盤)開始時で25%遅延
では全く数字の意味が違う。
次は、スナップショットではなく、微分値。
(a)期間4開始時での25%遅延。期間1からほぼ8%ずつ遅延が累積。
(b)期間4開始時での25%遅延。期間2までは遅延0。期間3で25%遅延。
では、やはり数字の意味が異なることは明らかだ。このように、スナップショットで数字を切り取っても、その数字からプロジェクトがどういう状況にあるかを判断するのは難しい。上の微分(時系列グラフ)も含めて、いろいろな視点から数字を見る必要がある。
◆ベースライン以外の状況をどうみるか
さらに、判断を複雑にするのは、ベースライン以外の状況である。上の例は、スケジュールだが、コスト、リソース、品質のなどでも同じような議論ができ、これらは上のような複雑さはあるにしろ、ある程度定量的に分析できる。
ところが、実際のトラブルのときに多くの人が真っ先に気にするのは、数字そのものよりも、プロジェクトマネジャーの状況だとか、プロジェクトメンバーの疲労だとか、上位組織の関心、あるいは、ベンダーや顧客の協力といったことである。
いくら、数字的に回復の可能性があっても、メンバーに覇気がなければ危ないと考えるのが自然であるし、上位組織が逃げていたらもうダメだと考えるのが自然だ。プロジェクトマネジャーはこの辺りのところをよく観察して、トラブルかどうかという判断をする必要があるのだ。
◆対応が必要だからトラブルではない
さらに、もう一点、注意すべきことがある。トラブルとみなすべきかどうかは、対応が必要かどうかとは別の話であるということだ。
例えば、上の例で
・期間4開始時での25%遅延。期間1で遅延25%。期間2、3は遅延なし。
という例を挙げたが、これは回復のための対応は必要だが、トラブルであると考えにくい。回復のための対応は、納期の前倒しを求められた時と同じ平時の計画変更である。粛々とすべきものである。
これに対して、
・期間4開始時での25%遅延。期間2までは遅延0。期間3で25%遅延。
の場合には、回復も必要だし、明らかにトラブルである。したがって、平時の計画変更ではなく、緊急体制を取る必要がある。つまり、場合によってはプロジェクトマネジャーまで含めた体制の変更と支援の強化、などをリカバリーとして行う必要がある。
もちろん、上にも述べたように、ベースライン以外の周辺状況がどうかによって最終的には判断されるべきであるが。
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