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◆ドラッカーブーム来る
今年は史上空前のドラッカーブームのようだ。報道バラエティはもちろん、お笑いのメッカ・関西では、お笑いバラエティでもドラッカーが取り上げらている。
きっかけになったのは昨年発売された1冊の本だ。通称「もしドラ」、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という小説である。高校野球が真っ盛りだが、この小説は弱小野球部の「女子マネジャー」がマネジャーの仕事を知りたくて、ドラッカーのマネジメントを読み、野球部を改革していくというストーリー。
岩崎 夏海「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」、ダイヤモンド社(2009)
http://people.weblogs.jp/books/2010/01/management.html
ドラッカーといえば、ほとんどの出版を手がけているのがダイヤモンド社だ。ダイヤモンド社は大正2年の創業以来、ハーバードビジネスレビューを始め、マネジメント分野で大きな影響を与える出版活動を多数手がけている。もちろん、ドラッカーの著作物の翻訳出版もそのひとつだ。
そのダイヤモンド社が「もしドラ」で創業以来初めてのミリオンセラーを達成したのだ。今起こっているドラッカーブームがどれだけ凄いかよく分かる。
◆ドラッカーの魅力は原理原則の追求
ドラッカーの魅力は、原理原則の追求にある。ただし、ただの原理原則ではない。マネジメントというシステム全般、あらゆる分野で原理原則を追求しており、それが矛盾することなくつながっているのだ。マネジメントの発明者といわれる理由はここにあり、マネジメントの体系と原理原則を示している。
ドラッカーのすごさを身をもって感じたことがある。PMstyleで実施しているPM養成講座という10日間の研修を開発したときのことだ。この講座は、プロジェクトマネジメントのテクニカルスキルはPMBOK(R)に準拠し、マインドセットはほぼ全面的にドラッカーの考え方をプロジェクトやプロジェクトマネジメントに適用する形で取り入れている。PMBOKの部分だけであれば3日間もあればできる内容を10日間にしているのは、マインドセットの構築と実践力の習得を目標にしているからだ。
(参考)PM養成講座:http://pmstyle.biz/ken2/pm.htm
◆スムーズに定着するドラッカー思考の秘密
多くの企業でこの講座を開催させて貰っているが、PMBOKのやり方に抵抗感を見せる企業はあっても、ドラッカー思考をベースにしたマインドセットに抵抗をする企業は皆無であり、また、そのマインドセットが実践につながる。これがなんといっても凄い。
たとえば、
価格設定の唯一健全な方法は顧客の望む価格に合わせて製品を設計することである
という指摘がある。この考え方に立つと、「見積もり作業とは顧客の望む価格に合わせて製品を設計することである。だからこそ、プロジェクトにおいては見積もりが重要なのだ」ということになる。こんなあたり前のことが意外と理解されていないことが多い。既存の設計の積み上げで価格を決めるのが正しいと思っているプロジェクトマネジャーが少なくない。
だが、この考え方は意外と、スムーズに受け入れられる。もちろん、実践は厳しいが、意外と定着する。原理原則であるし、このような態度で仕事をすることは、ダニエ
ル・ピンクのいうモチベーション3.0の原動力になる
・自律性
・自己マスタリー(成熟)
・明確な目的
を得ることにつながることが分かる。もちろん、この3つの必要性についても、プロフェッショナル論や成果論なので指摘している。
これらを統合して考えると、製品の設計を内発的動機を持ってやっていく方法は顧客の望む価格に合わせて製品を設計することだということになる。
◆プロジェクトマネジャーに必須のドラッカー思考
ドラッカーの原理原則には、現実的な意味でもこのように道理の通るものが多い。だから、影響力がある。道理が通る理由は、マネジメントの体系にある。見積もりの場合であれば、マスタリーについて言及することはよくある。しかし、いくらスキルが成熟しても、顧客の要求を徹底的に考え抜いて、目的を明確にしない限り、そのスキルを使うことはできないし、なれ合いの無責任状態を捨てて、プロジェクトマネジャーやプロジェクトスポンサーが責任をとり、自律的に行っていない限りできない。つまり、マネジメントのさまざまな要所を押さえ、ぶれることがないように指摘が置かれている。ドラッカーが体系的に考えている分野は
・マネジメント
・戦略
・マーケティング
・イノベーション
・リーダーシップ
・自己実現、プロフェッショナル
・未来創造
など、非常に広範である。これがドラッカーの世界である。
PMBOKという手法をうまく使いこなしていくためには、プロジェクトマネジャーには、
(1)PMBOKの知識
(2)一般的なマネジメントの知識とスキル
(3)業務の知識とスキル
(4)ヒューマンスキル
(5)プロジェクト環境
の5つが必要である。このうち、(1)を除くすべての領域において、ドラッカーはプロジェクトマネジャーが必要とする知識やスキルの使い方を教えてくれる。そのように考えて見ると、専門性だけでやってきた日本で今ドラッカーに関心が高まっているのは、偶然ではなく、必然だと考えておくべきだ。プロジェクトマネジャーもその例外ではなく、自らのプロジェクトマネジメントの専門性をより効果的に使い、PMコンピテンシーを高めるためにも、ドラッカーを学ぶべきである。
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