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◆プロジェクト憲章を誰が書くのか
10月28日に開催したセミナー「PMO2.0」セミナーのパネルで、プロジェクト憲章を誰が書くかが話題になった。一般的なプロジェクトマネジメントの教科書では、プロジェクト憲章はミッションステートメントであり、プロジェクトのミッションとプロジェクトマネジャーの指名を目的としたドキュメントである。
その意味では、例えば、事業部長など、組織のしかるべき人が書く。プロジェクトによっては、社長が書くようなものがあってもおかしくはない。
◆プロジェクト憲章で決めるのは目標か、制約か
しかし、現実にはビジネスであるので、ミッションの中には組織からプロジェクトに課したい条件が入ってくる。例えば、予算である。ここで問題になるのは、プロジェクト憲章に書いた予算というのは、「制約条件」なのか、「目標」なのかだ。
例えば、予算を100万円だとプロジェクト憲章で定められたとする。これは100万円使えということなのか、それとも100万円以下に抑えよということなのかだ。
予算を書かれている場所が計画書(あるいは管理計画書)であれば、間違いなく前者である。予算100万円という計画で90万円しか使わなかったら、手抜きをしているか、見積もりが不適切であったかのいずれかである。その意味で褒められたことではない。
問題はプロジェクト憲章に書かれることの意味で、これは現実を見ても企業によって異なる。計画と同じように100万円(目標)という企業もあれば、100万円以下にせよ(制約条件)という意味の企業もある。この問題は組織のガバナンスの問題であり、権限委譲の本質に関わる問題である。
◆制約下での意志決定を承認する意味
プロジェクト活動の本来的な意味合いからすれば、目標ではなく、制約条件である。本来プロジェクト憲章には目標は書かれるべきではない。目標は制約条件を守れる範
囲で、プロジェクトが自発的に決めるべきものである。つまり、プロジェクト憲章で指名されたプロジェクトマネジャーが組織から与えられたプロジェクトの実施目的に基づき、制約条件の範囲の中で(メンバーと相談しつつ)、目標を自己決定する。このような役割を果たすのがプロジェクト憲章である。
ただ、ここでややこしい問題が出てくる。それは、プロジェクトでの決定事項を組織として承認する必要があると考える組織マネジメントが多いということだ。決定と承認の関係は結構複雑であるが、承認されないとできないということではないと考えると、承認行為は「組織としてプロジェクトの決定を支援できるかどうかの判断」だということになる(もちろん、承認されないものはできないと考える組織もある。ここにも権限委譲の問題が出てくる)。
◆意志決定の支援であれば、ホールシステムアプローチ
承認の問題は本質的に「組織としてプロジェクトの決定を支援できるかどうかの判断」だと思われる。だとすると、プロジェクト憲章を書いて、一度、落とし、もう一度、それを拾うというのは効率がよくない。縦組織に厚い壁(階層の壁)がある米国の組織であれば仕方ないが、縦の壁より横の壁(縦割りの壁)の方が厚い日本の組織にはもっとやりようがある。
日本的な発想でいえば、経営トップから現場担当者までプロジェクトに関わる全員が集まって、プロジェクトの目的を共有しつつ、その中で適切な目標を決めれば、制約条件で与えるといったまどろっこしい方法は必要がなくなる。
かつ、その場に、横の組織、つまり社内ステークホルダも集まれば、横の壁の問題も解消する。その意味で、プロジェクト憲章の策定をホールシステム・アプローチ、特にワールドカフェを活用することは効果的である。
◆ワールドカフェの活用方法
ワールドカフェにはさまざまなメリットがあるが、中でも著者が大きいと思っているのは、ホモジニアス(homogeneous)であることにある。経営からプロジェクトの現場で、さらには顧客やベンダーなどの社外ステークホルダまでが一同に会すこともできる。集まれない場合にも同じスタイルで話合いをし、話し合いの結果を同じスタイルで伝えていき、混ぜ合わせた上で、フィードバックすることができる。
このような仕組みは意外と作るのが難しいものだが、ワールドカフェという一つの方法で簡単にできてしまう。これはすばらしいことだ。工夫次第では、凄いことができる。特に、プロジェクト憲章のように組織を越えた意志決定においては、有効である。
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