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これまでプロジェクトマネジメントが定着し、これまで定着化を推進をしてきたPMOの役割が改めて問われるようになってきた。昨年末から調査したところでは、弊社がPMOの設立やプロジェクトマネジメントの導入を手掛けてきた企業の50%強の企業で、なんらかの形でPMOのリストラが行われている。
PMstyleでは、定着化・標準化の役割を終え、次の段階を目指すPMOをPMO2.0と呼んでいる。そして、PMO2.0の一つのあり方として、パフォーマンスコンサルティング部門になることを提唱している。
パフォーマンスコンサルティングは日本ではあまり知られていないが、ASTD(American Society for Training & Development)など、人材開発に関する国際会議ではトラックが設定されるようなメジャーな分野である。
パフォーマンスコンサルティングとは
人にかかわる問題の適切なソリューションを見つけ出し、実行し、効果測定をするまでの一連のプロセス
だと定義される。
◆研修は業務に役に立たない?!
従来、人にかかわる問題の解決といえば、研修(トレーニング)か、OJTだった。人材開発部門は事業部門からの研修の要請を受け、提供してきた。
プロジェクトマネジャー(リーダー)の問題であれば、「プロジェクトマネジャーがスケジュールの管理ができず、プロジェクトの納期遅れが多い」という問題が頻発すれば、事業部門は「スケジュール管理手法」の研修をやりたいと人材開発部門に要請する。あるいは、「顧客からの要求変更が多い」という問題が持ち上がれば、事業部門は、「コミュニケーションの研修」や、「要求分析の研修」を人材開発部門に要請する。
このような要請を受けて、人材開発部門は研修の提供をするわけだが、研修である限り、その成果は、受講者数、受講者満足、研修内容の適切さなどの研修としての指標で評価される。そして、その研修により、どの程度スケジュール遅れが減少したか、どの程度要求変更が減少したかは評価されないままで終わることが多い。
もちろん、その研修が受講者の抱えている問題解決にどの程度役立ったかは受講者満足を介して間接的には評価されるが、しかし、多くの場合、その評価は研修の内容が業務に役に立ちそうかどうかの評価であり、研修で学んだことが実践できたかどうか、さらには効果を発揮したかどうかの評価にはならない。現実には、実践できないことが多く、それ故に研修は結果として業務に直接役立たないと評価されることが多い。
これらのことはある程度、共通認識になっており、それ故に、事業部門は自らが望んだ研修であるにも関わらず、業務を優先する。もし、喫緊の業務があれば研修の受講を見合わせることになる。
ここで、問題は研修の内容にあるとは限らないことに注意しておく必要がある。特にプロジェクトマネジメント手法についていえば、研修で学んだ内容は十分に実践的であることが多い。そして、研修を受講したプロジェクトマネジャーは研修で学んだことを活かそうとしているが、所属部門がそれを歓迎しないため、結局実践できないというケースが多いのだ。
◆研修のジレンマ
研修が実務に役に立たないという問題に対して、人材開発部門の言い分としてよく聞くのは
・研修テーマを決めたのは事業部門である。そもそもテーマが実情に合っていない
・研修成果の活用に関して、職場の問題は職場で解決してほしい
の2つだ。
挙句の果てには、研修は即効的な効果を目指すわけでなく、人材育成は長い目でみるべきだと言い出す。このような人材開発部門の態度が、事業部門の研修より業務優先という態度を生み出すともいえる。
この議論は本質的な矛盾を含んでいる。事業部門はパフォーマンスが悪いので研修をしたいと思っているのだが、パフォーマンスが悪いので研修を受ける時間がないというジレンマに陥る。
◆本当に人を育てるには
さらに、この議論は、本当に必要な人材がこのような方法で育つのかという問題にも発展しかねない。
プロジェクトマネジャーの育成がよい例である。プロジェクトマネジャーの多くは、研修で学んだことが、上司の無理解で実践できないという。多分に言い訳の部分はあるが、たとえば、現実に、「計画に時間をかけている時間があれば、速く作業に着手しろ」といい、いい加減な計画を承認してプロジェクトを初めてしまうプロジェクトスポンサーは少なくない。
さらに深刻な問題は、そのような経験をしたプロジェクトマネジャーの多くが、職位が上がり、プロジェクトスポンサーの立場に立つと、以前、自分を悩ませたプロジェクトスポンサーと同じ行動をしていることだ。
理由は単純である。プロジェクトスポンサーにも上位者がいて、その上位者が計画を練るよりは、動くことを評価するからだ。どのような理由があるにしても、プロジェクトマネジャーのときに実施した研修によって、長期的に見ても育成されたとは言い難いわけだ。長期的な視点で研修結果は評価されるべきだというのであれば、せめて、プロジェクトスポンサーになったときには、プロジェクトマネジャーに正しいプロジェクトマネジメントをさせるように行動してほしいわけだ。
◆PMOの出番
要するに、研修だけをやってもパフォーマンスは変わらないのだ。
プロジェクトマネジメントの例でパフォーマンスを変えるためには、プロジェクトマネジャーのスキル開発と同時に、研修を受けたプロジェクトマネジャーが仕事をする方法を変えることができるように、業務管理プロセスを変えたり、上位管理者のマインドを変える研修をすることも必要かもしれない。
このように人に起因する問題を、システム的にとらえて、ソリューションを考え、その実行、および、成果測定まで行う活動をパフォーマンスコンサルティングという。もう、お気づきだと思う。これこそ、PMOの出番である。
もちろん、現行の人材開発部門がパフォーマンスコンサルティング部門になるというのが、HRM(ヒューマンリソースマネジメント)的な流れなのだが、少なくともプロジェクトマネジメントに関しては、それは合理的ではない。もともとプロジェクトのパフォーマンスの問題を取り扱う部門がPMOである。そのPMOが人に視点を置き、パフォーマンスコンサルティングを展開すること以上に合理的な流れはないだろう。
多くの組織では、PMOの活動は一段落している。もちろん、継続的改善ということでやることは山ほどあるのだが、プロジェクトインフラストラクチャーの整備が一段落すると、プロジェクト内PMOのように直接支援に重心が移ってきている。
直接支援が必要ないとは言わないが、直接支援に舵を切ると、その組織のプロジェクトマネジメントの進化は停滞し、問題点の改善のみになる。一方で、まだ、ほとんどの企業ではプログラムマネジメントの導入といった変革を伴う進化が残っており、ここで進化が停滞することは致命的である。その意味で、まだ、PMOの経営的な役割は残っている。
この状況で、上に述べたように、次の世代のPMO(PMO2.0)にとって、人を中心として組織的な意味でプロジェクトマネジメントの進化を促していくパフォーマンスコンサルティングのミッションは天命ではないかとも思える。
こんな問題意識で、この連載を始める。
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PMO2.0のためのパフォーマンスコンサルティング入門
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第1回 PMO2.0はパフォーマンスコンサルティング部門を目指せ!
第2回 パフォーマンスコンサルティングと研修の違い
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