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◆問題をどう見るか
前回、コミュニケーションの事例に基づき、パフォーマンス改善には
(1)ビジネスニーズ
(2)パフォーマンスニーズ
(3)能力ニーズ
(4)環境ニーズ
の4種類の視点(ニーズ)があり、どこがもっとも重要なニーズであるかを見極め、そのニーズに対して手を打っていく必要があることを説明した。
しかし、この話はそんなに単純な話ではない。仮に、事業部長がPMOに相談したとしても、必ずしも、事業部長の言い分だけを聞いておけばよいとはならない。研修とパフォーマンスコンサルティングの違いはこれまでに述べてきたが、この違いは単に活動の違いだけではなく、問題の見方、言い換えると問題のオーナーの違いでもある。
実は前回のコミュニケーションの問題もそうだが、組織は問題が発生したときに、「下」の問題だと考えたがる。たとえば、コミュニケーションが悪ければ、現場のメンバーのコミュニケーションスキルの問題だと考えがちである。そもそも論をいえば、プロジェクトマネジメント自体、たとえば、納期の問題とか、品質の問題を現場の問題だと考えたから、導入されたものだ。
しかし、前回も述べたように、問題のとらえ方が不適切であればいくら一生懸命、問題を解決しても、本質的な問題は解決しないし、本当の問題が別の問題を引き起こすだけだ。実際に、プロジェクトマネジメントの導入はそのような失敗をしている。
これはガバナンスやメンツやいろいろな要素が絡む組織の不条理だと思うが、パフォーマンスコンサルティングではこの不条理に切り込んでいく必要がある。
◆パフォーマンス改善を考えるときのレベル
パフォーマンス改善を考えるときに、
・プロセスレベル
・戦術レベル
・戦略レベル
の3つのレベルで考え、相互関係を考えていく必要がある。「ハイ・フライヤー」で、次世代のリーダーの育成方法を論じたモーガン・マッコールは、「組織の中で、下が変わって上が変わらなければ、下はジレンマでつぶされてしまう」という指摘をしている。これを実現しなくてはならないのだ。
◆組織の不条理の実例
たとえば、QCDの目標達成率の向上という課題に取り組むとする。まず、プロセスのレベルは業務のレベルであるので、ここではプロジェクトマネジャーのスキルアップがソリューションになる。問題は、QCDのギャップがプロジェクトマネジャーのスキルだけで発生しているかどうかである。この判断には、プロジェクトマネジャーのあるべき姿を「QCDを守る」といった結果としてではなく、行動として表現してみるのが有効である。
ここでたいていの企業は、結果でしかプロジェクトマネジャー像を描けない。その場合には、もっと上に問題があると考えるべきである。それが戦術レベルである。戦術レベルでは、理想的なプロジェクトマネジャーの活動を妨げているものを見つけるとよい。ここでは、プロジェクトマネジャー自身のパフォーマンスであったり、プロジェクトマネジメントと同期すべき組織プロセスの不備であったりするわけだ。これらを解消する。
このような障害を解決しても、まだ、パフォーマンスが足らない場合には、根本的な改革をする必要がある。これにはいくつかの視点がある。ひとつは、マーケティング戦略の問題である。たとえば、IT企業であれば受注価格や納期の条件を改善するといった問題になる。商品開発であれば、商品価格と機能のバランスを改善することである。これは、製品戦略の問題になる。
◆とりあえずはNG、全体を見る
もうお分かりだと思うが、組織の不条理という問題は最初から、全体を見ずに、とりあえず、プロセスを見るという問題なのだ。ビジネスがうまくいっていない組織のマネジメントやプロセスには必ず不備があるので、現場に切り込めば必ず改善点がある。ゆえに、「現場を改善しよう」となるわけだ。
しかし、パフォーマンスを改善するためには、全体を見なくてはならない。たとえば、プロジェクトマネジャーのスキルが低いから、それを組織としてプロジェクトマネジメントを徹底的に支援するとか、コスト競争ではなく、付加価値で勝てるような製品戦略を展開するという方法だってあるわけだ。
それを闇雲に現場から改善するのは理に適っていない。実際にこの問題については、戦術レベルから手をつけている企業もある。
パフォーマンスコンサルティングとして重要なことは、一点集中主義ではなく、バランスを取ることだ。プロセス、戦術、戦略は独立しているものではない。一つを引き上げれば、ほかも上がる。
◆全体を見るための壁はコスト
どのレベルのパフォーマンス向上を図るのが、もっともコストパフォーマンスが高いかを十分に考え、取り組み方法を決めるべきである。ちなみに、組織の不条理が起こる理由は、コストにある。たとえば、トレーニングで部長を1日かり出すと、自身の人件費だけではなく、膨大なコストが発生することになる。だから、そこには行かない。
しかし、よく考えて見ると、それだけ影響のある人の行動が改善されると、リターンも大きい。つまり、コストパフォーマンスは大きいのだが、問題はリスクが大きいことだ。だから、なかなか、そのような選択をしない。ここは、パフォーマンスコンサルタントとして打ち破っていくべき壁だといえる。
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