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立ち読みは、PM養成マガジンの有料版の「PM養成マガジンプロフェッショナル」
の記事を「立ち読み」としてお届けするものです。
今回、お届けするのは、サプリ274(2011年7月7日配信)です。
PMサプリの記事は、
「著者 好川哲人からのメッセージ」+サプリ本体
という構造になっています。
バックナンバーの「著者 好川哲人からのメッセージ」は、PM養成マガジンの
公式ブログ「プロジェクトの補助線」で公開しています。こちらをご覧ください。
また、バックナンバーで人気があるのは、
【ランキング】PMサプリバックナンバー人気ランキング
です。
では、サプリ274を立ち読みください。
☆★好川哲人からのメッセージ★☆
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企業研修などの機会に、プロジェクトマネジャーに「ラインの関係にないプロジェク
トメンバーとの付き合い方」についてたずねてみると、コントロールしているという
感覚の人はさほど多くありません。「お願いしている」という感覚の人が多いようで
す。
プロジェクト(マネジメント)の中で、コントロールの問題はあまり議論されない問
題ですが、重要な問題です。教科書的にいえば、
メンバーは決められた責任(レスポンシビリティ)に対して自律的に活動し、プロジ
ェクトマネジャーは生み出された成果物(とスケジュール)を管理する
ということになります。ところが、現実には自律的な活動という部分が実現されてい
ないことが多く、であるにも関わらず、メンバーをコントロールする手段を持たず、
苦悩しているプロジェクトマネジャーは少なくありません。
この問題は結構深刻な問題で、「チームとしてはうまくいっているのだが、成果に結
びつかない」と告白するプロジェクトマネジャーもいます。本来はおかしな話ですが、
いわんとしていることはわかりますよね。チームの雰囲気はいいのだが、責任の所在
があまりはっきりしないということです。
責任を明確に意識しないということは、自律していないということです。どのように
して、自律させるか。キーワードは信頼関係を築くことにあります。
このような問題意識で書いたサプリです。
【効用】
・PM体質改善
リーダーシップ発揮
・PM力向上
ピープルマネジメント力向上、チームをまとめる力の向上、リスク対応力向上
・トラブル緩和
モチベーション向上、チームの士気向上
エムアンドティ・コンサルティング代表 好川哲人
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■PMコンピテンシー強化に効く 読むサプリメント ★PMサプリ☆
■PMサプリ274:コントロールを手放し、新しい関係を作る
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コントロールをしない関係では、信頼がその代わりを果たす。信頼で結ばれた関係を
育てることができたなら、あなたがコントロールを手渡せば、渡された相手は責任あ
る行動をとるようになる。(シャーリーン・リー、コンサルタント)
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◆リーダーは何をどの程度コントロールできているのか?
シャーリーン・リー氏は、新技術の活用コンサルティングで知られる戦略ファームで
あるアルティメーター・グループの創設者。この一節は、リー氏の著書「Open
Leadership」(邦訳「フェイスブック時代のオープン企業戦略」、朝日新聞社
(2011))の中の一節である。この本は原題からわかるように、オープンリーダーシ
ップについて論じた本である。オープンリーダーシップの前提は、そもそも、管理者
は部下をコントロールできていないのではないというものだ。
リー氏は
企業の中で、リーダーは何をどの程度コントロールできているのだろうか?顧客に商
品を買わせることができないのと同じように、社員に戦略を遂行させることをコント
ロールすることはできない。
と問題提起した上で、コントロールできていないという事実に直面しなくてはならな
いと指摘している。
◆コントロールするには基準と手段が必要である。
プロジェクトマネジメントでは、監視・コントロールという活動がある。プロジェク
トであればコントロールできるということなのだろうか?これが今回の問題提起であ
る。
まず、何をコントロールするのかという問題がある。プロジェクトマネジメントがコ
ントロールするものは成果であり、人ではない。もう少し、厳密にいえば、プロダク
トスコープとプロジェクトスコープであり、人ではない。プロダクトスコープについ
てはいえば(中間)成果物のスケジュールをコントロールする。プロジェクトスコー
プについてはパフォーマンスをコントロールする。
コントロールするには基準と手段が必要である。
◆なぜ、戦略実行はコントロールできないのか
ちょっと脱線するが、リー氏がコントロールできていないだろうと言っているのはこ
こに理由があるように思う。もう少し、コントロールの意味を明確にしておいた方が
議論がすっきりするかもしれないので、ここではコントロールできているという意味
をPDCAを回すことができているというように解釈しよう。
すると、手段とはアクションである。戦略実行のPDCAを回す手段というのはあり
そうでない。確かに、戦略計画を策定し、進捗評価の基準を作る。そして、四半期ご
とに戦略ゴールの達成状況をチェックする。達成状況が好ましくない場合には、部門
に計画の見直しをさせ、部門長は計画を改善するが、これは多くの場合、手段にはな
らない。計画を変えることができても、人の行動を変えることができなければ、現実
を変えることにはならないからだ。計画を変えても相変わらず、部下は手抜きをして
いれば、新しい計画も同じ運命をたどるだけだ。
結局、部門長は部下を人事権でコントロールするしか手立てはないのだが、昇進する
ことより、首にならない程度にマイペースで仕事をする部下に対しては、人事権です
らコントロールできているかどうかは怪しい。
◆プロジェクトをコントロールする手段とは
プロジェクトの話に戻るが、基準としてはベースラインがある。プロダクトスコープ
をコントロールしようとすると、手段はプロジェクトスコープである。プロジェクト
スコープを変えることによって、パフォーマンスを上げていく。これは基本的には、
上の戦略実行で述べた部門長の改善活動と同じものである。従って、そんな有効な手
段にはならない。
そんなことはわかっているので、プロジェクトマネジャーは組織上、自分の部下であ
る人を使いたがる。人事権が発動できるからだ。あるいは、自分の部下でない場合に
は、人事権を欲しがる。
でも、結局、戦略実行で述べたような話になる。
◆コントロールできないという前提で何をすべきか
この議論の問題は、リー氏が指摘しているように、コントロールできるということを
前提にしていることにある。コントロールはできないという前提であれば何をすべき
か。
この答えは、リー氏が指摘するとおり、信頼関係を構築することである。ここで、よ
くある間違いは、信頼をするために結果を出せというロジックだ。気持ちはよく分か
る。特に日本の現場からたたき上げというのは、徹底した実績主義である。実績を残
し、少し大きな仕事を任され、そこで実績を残す。この繰り返しでやっと一人前の仕
事をさせてもらえるようになる。このシステムはよいシステムだと思う。
このシステムは失敗の影響をコントロールしている。孫悟空がお釈迦様の掌で踊らさ
れたように、部下を掌で踊らせている。掌で動いているうちは失敗しても、部門や組
織としては失敗にならない。そうしていくうちに信頼関係が構築され、手の外で動け
ることを許してもらえるようになる。
◆どのように信頼関係を築いていけばよいか
このような仕組みへの未練がある組織が多いが、この仕組みは二つの意味で非現実的
なものになっている。一つは、そんな悠長な人材育成をやっている余裕はないこと。
もう一つが重要なのだが、そもそも掌で動ける範囲で得られる成果に意味がなくなっ
ていることだ。このような状況で、どのように信頼関係を築いていけばよいのか。
いくつかポイントがある。一つ目は、メンバーをリスペクトすることだ。掌でやって
いたのでは自分の評価につながる成果は得られないという現実を認識すればよい。尊
敬すべきはスキルではない。プロジェクトマネジャーとメンバーを比較したときに、
プロジェクトマネジャーがスキルが高いのは当たり前だ。メンバーの専門分野でもプ
ロジェクトマネジャーの方がスキルが高いことがよくある。問題はスキルではなくて
発想なのだ。メンバーにしかできない発想が成果につながることは多い。
その上で、徹底的な情報共有である。漠然と信頼関係を築くにはと考えてみると難し
い課題であるが、失敗をしないでも不信感を持たせるにはどうすればよいかを考えて
みるとよい。情報を隠ぺいすることだ。そして、失敗をしたところで、不信感は本当
の不信に変わる。包み隠さず、情報を徹底的に共有することが信頼関係の構築の第一
歩だと考えるべきだ。
◆徹底的な情報共有に「責任」を持たせる
ただ、メンバーが情報を隠すには理由がある。失敗するとまずいからだ。この点にお
いては、情報共有をすることを「できれば」ではなく、責任を持たせることだ。もち
ろん、プロジェクトマネジャー自身が責任を持つ必要もある。
メンバーがこの責任を果たす限りにおいて、失敗を許容する。これが最後だ。もし、
メンバーが自分の状況、知っている状況を包み隠さずに話した上で、プロジェクトが
失敗したら、その原因がメンバーにあってもプロジェクトマネジャーの責任である。
このことをよく認識しておく必要がある。
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