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◆はじめに
前回は、戦略的アラインメントの6つの成功条件
(1)バランスがとれ、また、よく考えられた目的・目標の設定されていること
(2)明確で、かつ、耐久性のある目的が設定されていること
(3)階層化をきちんとできるようなフレームワークがあること
(4)目標が計測可能であること
(5)ステークホルダの合意形成が行われていること
(6)実行計画が組織としての仮説になっており、実施体制作りが十分であること
のうち、(3)について説明した。今回は、(4)について説明する。
◆プロジェクトの目標はQCDだけでない
プロジェクトの管理において、目標が計測可能であるという条件は当たり前だと思うかもしれない。QCDを目標として設定するならば、定量化されているからだ。
しかし、戦略アラインメントの視点から考えた場合、プロジェクトも目的がQCDの達成だけで終わることは考えにくい。たとえば、トップブランド構築を戦略として策定し、「競争力を持つ商品を開発する」といった目的を設定したとしよう。この目標として、「シェア」のような比較的定量化しやすい指標で目標を設定することはできるが、戦略としてブランド構築を掲げている限り、競争力という目的の中にブランドに関する指標は不可欠だろう。
自社の範囲だけで考えれば、ブランド力を定量化することはできるだろう。定義の問題である。たとえば、認知度とか、購買における影響力とかだ。ところが、このような指標で他社のブランドを評価してみても、適切な評価になっているとは限らない。たとえば、ブランドヒストリーを重視している企業と、単純な認知だけで評価しても競争力の指標としてはあまり適切な評価とはいえないだろう。
このようにプロジェクトの評価指標は必ずしも定量的なものが主流だとはいえず、定量化の工夫をし、メトリクスの設定を行う必要がある。
◆目標のレベル
その際に問題になるのが、目標のレベルである。目標のレベルとしてよく使われる枠組みは
・ミニマム
・ターゲット
・ストレッチ
である。
ミニマムは、プロジェクトのデザイナー(イニシエーター)が、最低限受け入れられると考える目標レベルである。たとえば、納期に関する目標、コストに関する目標、品質に関する目標などがメトリクスとして設定される。
このメトリクスは必ずしも戦略ゴールと整合しているとはいえない。プロジェクトポートフォリオでいえば、「ブレッド&バター」に相当し、戦略云々ではなく、組織の要員に見合う売り上げの維持のために必要なプロジェクトかどうかを判断するレベルになる。したがって、メトリクスがクリアできないプロジェクトは中止されるべきである。
二番目のターゲットは、プロジェクトデザイナーが、戦略ゴールの実現として妥当性があると判断したレベルである。このレベルは戦略経営のためには必ずクリアされる必要がある。また、ある部門でこのレベルが達成された場合には、ほかの部門にも同じレベルが展開されることが望ましい。
三番目のストレッチはよく使われる言葉なので、イメージがあるのではないかと思う。このレベルは、通常のやり方ではクリアできないレベルであり、「イノベーション」や「予期せぬ機会」があって始めて実現できるレベルである。ストレッチをうまく設定することがプロジェクトデザイナーのもっとも重要な任務だと考えるべきだろう。
◆メトリクスで戦略アラインメントの調整をする
目標を定量化する理由は、単に可視化をするだけの目的ではなく、戦略アラインメントのレベルの調整があることを十分に認識し、バランス間のある戦略アラインメントのレベルを実現していく必要がある。
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