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二者択一という発想(「か」の発想)がある。
二つの中からひとつを選ぶ。多くのエンジニアは嬉々としてこの仕事をする。技術者としての手腕に見せ所になることが多いので、気持ちはよく分かる。WindowsかLinuxか、接触式か非接触式か、技術Aか技術Bか。エンジニアの仕事とは選択の積み重ねであるといってよいし、選択の適切さこそが、エンジニアの能力だと言ってもよい。
さて、では、PMBOK「か」従来方式の管理かという技術の議論と同じように議論は意味があるのだろうか?
これはあまり意味がない。なぜか?
この答えを考える前にまず次のようなことを考えてみたい。
何か製品を構成する技術で、技術Aを選ぶと40%くらい、技術Bを選ぶと50%くらいの可能性で製品が思ったような機能を持つとしよう。言い換えると、どちらを選んでも50%以上の確率で、思ったものができない可能性が高い。
この状況でどちらの技術を「選ぶ」かという議論が意味があるか?多くの場合はないだろう。というよりも、このようなレベルの技術はまだ、技術とはいえず、どのように確率を上げるかという議論をしなくてはならない。新しい技術を探す、技術を改良するなど。
技術の選択が議論になるのは、8~90%の確率でそれらの技術がソリューションになるときである。そのときに、どちらがソリューションとしてより確実に製品機能の実現に繋がるか、技術そのものの実現はどちらが容易かなどを考える。だからこそ、議論も白熱する。
では、PMBOKはどうか?PMOBKを選ぶと50%くらいの確率でプロジェクトが成功するようになるかもしれない。従来のプロジェクト管理方法だと30%くらいだ。この状況でどちらを選ぶかを議論しても同じくあまり意味がない。ただし、答えは違う。従来方式「も」PMBOKも選ぶしかない。
マネジャーの人材育成でも同じような問題がある。経験か、理論かといった議論だ。冷静に考えれば、どちらかだけで100%人材を育てられるようなら苦労しないとみんな思っている。ところが、人材育成のコンサルをやると、必ずといってよいくらい、この問題を持ち出す人が出てくる。経験「も」理論も大切なのだ。
マネジメントと技術の違いの本質はここにある。つまり、マネジメントでは二者択一はほとんど意味を持たない。AもBもという発想(「も」の発想)が大切だ。この発想ができる人がマネジャーになれる人であり、口ではいろいろといっても、結局、Aか、Bかとしか考えれらない人はマネジャーにはなれない人だ。
エンジニアとマネジャーの間の、高く、乗り越えがたい壁はこの二者択一の発想を捨てられるかどうかだ。
ただし、エンジニアも高度なエンジニアになってくると、マネジメントに近い判断を求められることを忘れてはならない。技術のソリューションとしての確実性が減少するからだ。そういう意味で、Aクラス人材ではこの壁はないといえる。逆にいえば、この壁を感じないのがAクラス人材だといえるかもしれない。
さて、最後に問題をひとつ。二者択一では、問題発見(あら捜し)が重要だ。二者択一でない場合では、何が大切か分かるだろうか?
今週のPMサプリはアップルCEOのジョブスに学び、このテーマを取り上げている。
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