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◆なぜ、失敗すると、どんどん、はまるのか
先週末にフィギュアスケートのNHK杯のフリーをみていたら、ショートプログラムの上位選手が次々に失敗していた。失敗する様子を見ていると、失敗したものを立て直すのは難しいものだとつくづく感じる。
演技の最初の時期に失敗すると、そのあとのプランがきちんと実行できなくなってくる。理屈の上では、プラン通りに演技しないとどんどん状況が悪くなるというのは分かっているし、もう失敗するわけにいかないという気持ちが先立つのだろう。きっとあとの演技をより完璧にこなそうとする気持ちと、力が入るので事態がより悪くなる。
解説の荒川静香さんは盛んに「忘れて」とか「平静になって」とか言っているが、それが難しいのだろう。
多分に心理的な話だと思うが、この話はプロジェクトにおいても、そのまま、当てはまる。プロジェクトが深刻なトラブルに陥ったときに、冷静に進めていくというのは難しい。一般的な話でいえば、理由は組織の「眼」にある。組織がどう評価するかは別にして、多くのプロジェクトマネジャーは組織の「眼」を必要以上に意識する。上司だ。
◆はまるパターン
組織の眼を気にし始めたプロジェクトマネジャーがはまるパターンは2つある。一つは、何とかしないといけないとあせり、目先の状況がよく見えるような対応をすることだ。たとえば、要員を追加するといった策はこの典型であることが多い。
もう一つは上位組織にゆだねてしまう。つまり、上位組織の指示を受け入れることによって、その場をしのぐという行動に出る。その場をしのぐという言い方をしたのは、多くの場合、不適切な判断であっても受け入れてしまうことが多いからだ。本質的には上と同じ。とりあえず、受け入れればそれ以上評価が下がることはないという錯覚に陥るのだ。
◆あせりは伝染する
話は競馬に移る。地方競馬からのJRAに転入してきて大活躍をしているベテラン安藤勝己騎手がJRAのスター騎手である武豊騎手について「ジョッキーが心の中に勝ちたいと思うと、その思いが馬に伝わって、馬も力んでしまい、最後に効いてくる。彼はそれがたくさん勝てる理由だろう」と評価しているという記事をスポーツ雑誌で読んだ。
この心理もプロジェクトに当てはまる。プロジェクトマネジャーが焦ってなんとかしようと思ってしまうと、騎手と馬の関係のように口に出して何も言わなくてもチームに伝染する。チームメンバーが焦ってしまう。これによって、品質などのミスが出てくる。このパターンは多い。
◆いったん、断ち切り、プロジェクトを落ち着かせることが重要
著者はよくプロジェクトを失敗しないようにやるのではなく、成功させるように考えるべしと言っているが、トラブルの時に失敗しないようにすると逆効果であることが多い。スケートの例の如く、トータルで失敗しない(つじつまを合わせる)ためには、何とかして取り返さなくてはならないと思ってしまうのだ。トラブルが起こったら、まず、チームやステークホルダも含めて冷静になることを目指す必要がある。そのためには、まずはプロジェクトを落ち着かせることだ。これが安定化である。
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