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◆顧客が満足するには対話が必要
「顧客が満足する」にはどうすればよいか?プロジェクト要求定義をしっかりとして、顧客の要求を適切に把握するといったところにすぐに行きつくかもしれない。しかし、これは「顧客を満足させる」ための方法にすぎない。
顧客が満足するには、「対話」が必要だ。
対話とは何か?「コミュニケーション」だと答える人もいると思うが、一般的な意味でのコミュニケーションではない。古代ギリシア時代に多くの哲学者により、弁証法という方法が考えられた。弁証法は、テーゼ(正)、アンチテーゼ(反)、および、それらを本質的に統合したジンテーゼ(合)の3つで思考を深めていく思考方法である。
手軽に弁証法のことを知りたい人は、僕が大ファンである仲正昌樹先生の
仲正昌樹「知識だけあるバカになるな!」、大和書房(2008)
をお勧めしておく。
◆弁証法とディライト
弁証法と顧客が満足するディライトはどう関係があるのか?特に、ディライトという場合、ベンダーが画期的なことを考えて顧客が感動を生めばよいのではないかと思いがちである。
ちょっと脱線するが、リッツカールトンはなぜ、あんなにすばらしいサービスを提供できるのだろうか?全従業員がクレド(credo:リッツカールトンのサービスの基本精神をかいたカード)を持ち歩いているからか?従業員の誰もに、スイーツの宿泊費に相当するような裁量を与えているからか?もちろん、これらの仕組みは大切だが、何よりも大切なのは、顧客が中心にいて、顧客とのやり取り(対話)によってサービスが向上していくからだ。
初回に、期待と実績の話をし、期待と実績をバランスよく向上させていくのが顧客が満足する方法であり、ディライトを提供する方法だと述べた。そのためには、対話が必要なのだ。違う言い方をすれば、サービスを顧客と一緒に作り上げていくことによって、ディライトの提供が可能になる。
◆ウォーターフォール(一方通行)プロセスでは対話はできない
さて、プロジェクトの話に戻ろう。プロジェクトにおいて顧客が満足するにはどうすればよいか?言い換えると対話をするにはどうすればよいか?
ここで必要なのは、ウォーターフォール型のプロセスの精緻化ではない。いくら頑張っても一方通行のウォーターフォールプロセスでは顧客との対話を深めていくことはできない。顧客との対話によってスコープが決まっていくスパイラルプロセスが必要である。
顧客との対話を重視する場合に、何が必要か?対話は顧客から聞き出すことではない。顧客がこうしたい(テーゼ)といえば、それにはこういう問題がある(アンチテーゼ)と反論をする。ここから始まり、プロダクトの利用者は何が欲しいのか?、そもそも、この機能を持つことはどういう意味があるのか?などといった問答を繰り返し、最初は持っていなかった結論を生み出していく。このプロセスが弁証法による対話である。
◆対話には顧客中心型チームが必要
顧客がプロジェクトチームの外部にいる限り、対話は成り立たないのではないかと思う。顧客をプロジェクトチームの中、それも中心に座らせる必要がある。そして、対話を行いながら、顧客がプロジェクトを動かしていけるようにサポートを提供する。
そんなフォーメーションが必要である。このようなフォーメーションはCDT(Customer Driven Term;顧客中心型チーム))と呼ばれ、今後、プロジェクトマネジメントのやり方の一つになっていくと思われる。
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