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◆戦略はありますか?
セミナーなどでよく見かける光景。
講師「御社には戦略はありますか」
受講者「たぶんあると思います」
講師「例えば、どんなことですか」
受講者「あまり、明確に聞いたことがありません」
受講者は新入社員ではない。プロジェクトマネジャーやチームリーダーだ。
◆戦略を答えられない2つの理由
確かに、御社の戦略を説明してくださいといわれると答えに窮することが多い。これには2つの理由が考えられる。一つは、戦略計画はきちんと策定されているが、コミュニケーションが不十分であり、プロジェクトマネジャーのレベルまで伝わっていない。あるいは、具体的なアクションに落とし込まれた形で伝わっているというケースがある。例えば、顧客の囲い込みという戦略ゴールがあったら、「顧客の要求は極力実現せよ」という行動目標として伝えられているケースだ。
もう一つは、第3号の編集後記で少し触れたことがあるミンツバーグのいう戦略類型、
戦略とは、ミドルマネジメントが日常業務の中で適応し、新しいチャンスを取り込んでいくパターン
として戦略策定と実行をしているケースだ。はやりの言葉でいえば、創発である。
PMI流であれば戦略計画がガバナンスの中核であるが、日本組織の場合、プロジェクトXに見られるように、戦略感としてはミンツバーグの考えるような戦略感は強く、当事者は戦略がないと思いながら、実際には戦略を創り、実行しているケースも多い。
例えば、上のケースで、課長の考えで「顧客の要求を極力実現する」という方針で顧客対応しているうちに、その顧客にとってなくてはならない存在になり、特命の受注ができるようになったといったケースがそうだ。
◆戦略コミュニケーション
後者のケースは全く問題はない。戦略があるとかないとかいうことは言葉の遊びに過ぎない。というよりも、日本型のプロジェクト経営のあるべき姿だといってもよい。戦略マネジメント(戦略策定と実行)が適切に行われているということは「正しいプロジェクト」が「正しく行われている」ことであり、また、正しいプロジェクトを正しく行うコトによって戦略マネジメントによる成果の創出がされていることになる。
問題は前者のケースで、戦略がないといっているケースだ。このような場合、コミュニケーションに問題があるともいえるが、そもそも、戦略を伝えるというのはどういうことかを理解しておく必要がある。
一つは、上にも述べたように、組織の階層が戦略をだんだん具体化して下位組織に伝えていくという意味がある。この場合には、戦略は具体的な業務指示として伝わる。ただし、業務がプロジェクトの場合には、基本的には非定型業務であり、業務指示として伝えることは難しい。せいぜい、プロジェクト憲章のレベルの抽象度での指示になる。
つまり、
・目的(目標)
・制約
・前提
程度を与え、あとは現場に任せるような形になることが多い。場合によっては、目標を与えることもある。
◆戦略は読み取るもの
これだけの与件から、プロジェクトを行う場合には、プロジェクトマネジャーはプロジェクトの実行の拠り所となっている戦略そのものを理解し、背景情報としてもちながらプロジェクトを計画・実行していかないと、うまく行かない。
その際に多少、発想に切り替えが必要である。プロジェクトガバナンスを考えた場合、戦略があってその戦略の実行に貢献できるプロジェクトを定義し、現場に与えられるという形になる。そうではなく、これは現場が戦略を「読み取り」、その戦略の実行に寄与するプロジェクトを実施すると考えるべきである。
つまり、現場から見たときに、戦略は与えられるものではなく、読み取るものであり、読み取った結果によって戦略への寄与度が決まると考えるべきなのだ。
もう少し具体的に考えてみると、多くの企業で戦略と言っているものの正体は戦略ワードであることが多い。そこに、これまでの事業経緯やその分析が絡んでくる。これを将来の活動にどのように展開するかが戦略である。言いかえるとこの展開をすることが戦略の読み取りに他ならない。
その意味で、戦略があるかどうかを決めるのは、プロジェクトマネジャー自身であるといえる。
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