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◆なぜ、日本人は画期的なアプリケーションが作れないのか
先日、「日経コンピュータ」の前編集長である谷島宣之さんと、弊社のPMstyleプラチナ会員向け会報用の対談をしたときに、モノづくりでは現物があるのでうまくいったが、ソフトウエアでは目に見える現物がないのでダメだという話になった。
今回はこの問題を議論してみたい。
ものづくりはモノから入る。つまり、現物という具体的な姿から入り、そこでいろいろとモノをいじくり回しながらアイデアを出していく。そこでのアイデアの創出はすばらしく、それが日本企業の躍進を生み出した。これがうまくいったという意味だ。
しかし、ソフトウエアの場合、目に見える現物がない。そこで、ものを概念的に捉え、概念的なレベルで設計をし、アイデアを埋め込んでいく必要がある。
マッキンゼー出身のコンサルタントで、SAPやクインタイルズ・トランスナショナル、ルイ・ヴィトンなどの日本法人の代表を務め、現在は電気自動車用充電インフラ提供をするベタープレイスの日本法人代表を務める藤井清孝さんが、「グローバルイノベーション」(朝日新聞出版、2010)という本で、興味深い指摘をしている。ちょっと長くなるが、紹介しよう。
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私は、SAPという基幹業務向けのソフトウェア企業の日本法人社長を6年近く務めたおかげで、ソフトウェアの開発力強化に必要なものを身をもって体験した。ソフトウェア開発で一番大切な能力は「概念設計」である。まず、いろいろなシナリオをシミュレートしながら、論理的に詰めていく力である。
(中略)
日本人には「現場にすべての答えがある」と信奉している人が多いと感じるが、これは現場を積み重ねて結論を出す「演繹(えんえき)的な思考」教育の結果だと感じる。これに対してソフトウェアの開発には、トップダウンで概念設計から入っていく「帰納的な思考」が必要であり、これは日本の教育が得意としてきた分野ではない。このようにソフトウェアの開発では、「トップダウンの概念設計」「目に見える現場が存在しない」「試行錯誤が必要」といった特徴があり、従来の日本のメーカーが得意とする分野での経験が活かしにくいのである。
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まさにそのとおりだと思う。概念思考スキルを身につけない限り、ソフトウエアビジネスで日本が成功できるとは思えない。
しかし、現実には、ソフトウエア開発は国を挙げて見える化の方向に向かっている。これはこれだ重要な取り組みだと思うし、否定するものではないが、結局、概念的な思考ができるようにならない限り、競争力のあるソフトウエアはできないと思うし、プロジェクトマネジメントをうまく行い、ビジネスで勝つことも難しいのではないかと思う。
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