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◆はじめに
思えば、プロジェクトデザインに始まり、デザインという言葉を好んで使ってきたが、なかなか、膨らんで行かないという現実に遭遇している。1年ほど前には、「プロジェクトリーダーのためのデザイン思考」という連載を始めるも、3号雑誌ならぬ、1回で終わってしまった(弁解しておくとこれは震災の影響でメルマガ活動を縮小したため)。
ここ5年ほど、デザイン思考がずっと気になっていることは間違いない。PM養成マガジンの10周年記念セミナーでも、デザイン思考のセッションを準備した。
【PM養成マガジン10周年記念セミナー】
第3回 未来のユーザー要求を創出する方法としてのデザイン思考
日時:2012年06月09日(土)
詳細・お申込 http://www.pmstyle.biz/smn/pm_magazine10_3.htm
いろいろ考えてみて、もやもやしているのは結局、問題のとらえ方に問題があるような気がしてきた。デザイン思考の本を客観的に眺めていると、やはり、デザイナー、あるいはエンジニアの視点から書かれている。正確にいうと、デザイナーの現在の姿ではなく、あるべき姿で、デザイナーはどのように思考してほしいかを描いたのがデザイン思考だといってもよい。
しかし、マネジャーの視点からは少し見え方が違うような気がしている。
そこでデザイン思考はマネジャーの視点からどのように見えるのかに関する記事を書いてみることにした。体系やフレームワークを決めずに、デザイン思考で、かしこまった解説記事ではなく、エッセイ風に進めていきた。タイトルも仮置きとする。
どこまで続くかわからないが、一緒に模索してもらえれば幸いである。
◆IDEOのデザイン思考のフレームワーク
デザイン思考にはかなり、立派なフレームワークがある。デザイン思考という言葉は、米国のパロアルトに本拠を置くデザインコンサルタント会社IDEOがデザイナーの考え方を変革するために「再発明」した言葉だと言われている。IDEOのデザイン思考のプロセスは
(1)フィールドで観察する
(2)自由なアイデアを作り出す
(3)プロトタイプを作って考える
(4)物語を作る
というものであり、その後、提案されてきたいろいろなデザイン思考のプロセスの原型になっている。
◆プロジェクトと戦略実行
問題はこのプロセスを戦略実行マネジメントの中で、どのように位置づけていくかだ。
デザイン思考ではなく、通常のインダストリアルデザインを前提にした開発であれば、たいてい、コンセプトデザインと、開発の2つのフェーズに分ける。
そして、商品開発プロジェクトのコンセプトデザインのフェーズにデザインプロセスが入る。そこでは、マーケティングなどの調査を行い、戦略に基づく商品の仕様を決めてしまう。プロトタイピング(試作)を行う場合にも、微調整で行うことが多く、仕様が根本的に変わることはほとんどない。
◆デザイン思考による戦略実行
デザイン思考のプロトタイピングは意味合いが異なる。仕様を決めるためにプロトタイピングを行う。コンセプトデザインの中で、プロトタイピングを行いながら仕様を決めていくことになる。
この際に、問題になるのは戦略の扱い方である。通常の開発では、商品の仕様が戦略整合しているか、つまり、その仕様の商品を作れば戦略の実行になるかどうかは検証されるが、それ以外の要素はプロジェクトでは検討されないことが多い。
たとえば、流通を既存の流通を使うのであれば、流通の要求を聞くが、新規の流通ルートを考えているのであれば、それはプロジェクトのスコープ外として、別途検討することが多い。つまり、流通の要求が商品の仕様に反映されることはない。
デザイン思考で商品開発をする場合には、流通の問題と商品の仕様は切り離せない。すると、プロジェクトスコープが変わってくる。
今、流通といっているのはビジネスモデルの一つの問題であり、ビジネスモデルの問題と商品の仕様を関連付けて調整することになる。場合によっては、試験販売の結果、商品と流通方法を変えるといったプロトタイピングになることもある。
このことは、プロジェクトとしてみれば、プロダクトスコープだけではなく、プロジェクトスコープも段階的に決まっていくことを意味する。
問題は、このようなプロジェクトをどのようにしてマネジメントできるかだ。デザイン思考そのものもプロセスマネジメントの要素を持っている。しかし、それはあくまでも、プロセスのマネジメントであり、プロジェクトのマネジメントではない。
一方で、デザイン思考であろうが、ウォーターフォールであろうが、スケジュールの問題や、原価の問題が避けれるわけではない。むしろ、これらは、ビジネスモデルと一緒に検討されるべき問題である。
この考察は次回。
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